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親の預金、勝手に動かすと税務調査でバレます|相続対策の正解を税理士が解説

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親の預金、勝手に動かすと税務調査でバレます|相続対策の正解を税理士が解説

目次

1. はじめに|なぜ「家族間の預金移動」が問題視されるのか?

相続や贈与にまつわる誤解

家族間での預金移動――たとえば「親の口座からちょっとお金を引き出しておこうかな」といった軽い気持ち。

 

しかし、この行為が《税務調査で一発アウト》につながるケースが増えています。

私が税理士として対応したある相談では、「お母さまが亡くなる直前、子ども名義の口座に500万円を移していた」というケースがありました。銀行で口座を見た税務署調査官からは、すかさず「このお金は、本当にあなたの収入ですか?」という鋭い問いが入りました。結果として、それは《名義預金》として認定され、相続財産とみなされてしまったのです。生活費としてもらったつもりでも、証拠がなければ「ただの預かり」では通用しません。

こうした誤解は本当に多くて、「自分だけは大丈夫だろう」と高をくくった行動が、あとで想像以上のペナルティを招くこともあります。

「預金を移す=節税になる?」その罠とは

かつて、ある医師から聞いた話ですが、「銀行に預金をそのまま残しておくと相続税が高くなるから、子ども名義に少しずつ移していた」という方がいました。

 

相談を受けて驚いたのは、ご自身が生前贈与だと信じて振り込んだ数百万円が、贈与契約書も申告記録もないため「名義預金」として相続対象とされてしまったことです。

 

実際には、「年間110万円まで非課税になる暦年贈与」という制度はあるが、それを利用していれば合法であっても、形式と証拠が揃わなければ意味がないのです。

 

結果、節税どころか課税対象になり、重加算税の対象となる最悪の結末を迎える方も少なくありません。

 

本記事で得られる情報と対象読者

この記事では、あなたが以下のような立場であれば、必ず役に立つよう構成されています。

 

  • これから親の預金を移動しようとしている人
  • 過去に「生活費のつもり」で預金を子どもや配偶者名義にしてしまった人
  • 相続対策としてどう行動すべきか迷っている人
  • 税務調査を控え、不安で眠れない人

 

そして、以下の内容を実体験と専門家の視点をもとに、臨場感と信頼性たっぷりに解説していきます。

 

1.なぜ“家族間の預金移動”が税務署の鋭い視線に晒されるのか

2.名義預金の定義と、そのリスクを見抜く判断基準

3.調査で指摘を受けたリアルな事例(実例)から学ぶ

4.税務調査に該当しないため、合法に資産を移す方法

5.今すぐ使えるテンプレート・Q&A付き解説

 

あなたの行動が「安心と安全」へと変わる第一歩になるよう、この記事では明確で暖かく、専門的かつ親しみやすい言葉でお伝えしていきます。

 

ぜひ最後までお読みいただき、安心の未来への手がかりにしてください。

 

 

2. 税務署はどこまで見ている?調査の仕組みと実態

マイナンバーとKSKシステムの本当の力

マイナンバー制度が導入されて以来、税務署の資産把握能力は“別次元”に進化しました。

このシステムは「KSKシステム(国税総合管理システム)」と呼ばれ、国税庁が個人と法人の納税・所得・資産状況を一元的に管理しています。

あなたのマイナンバーと結びついた情報は、以下のように広範囲に渡ります:

  • 銀行口座の保有情報と入出金履歴

  • 証券会社での株式売買・配当情報

  • 保険契約の満期金・解約返戻金

  • 不動産の登記・売買履歴

  • 海外口座(一定金額以上)の有無と取引履歴

税務署は、これらをあなたが確定申告をしなくても裏側で自動的に取得・照合できる体制を整えているのです。

たとえば、あなたが相続で受け取った保険金の存在を隠していても、保険会社は「支払調書」を税務署に提出しています。

調査官は、申告内容とKSKに蓄積された情報を突き合わせ、“申告していない財産”があるかどうかを数秒で見抜くことができます。

私の知る税務調査では、「この証券会社、口座を閉じていますよね?」と調査官に言われて、依頼者が驚愕したことがあります。なぜなら、その口座は5年以上前に閉鎖済みで、申告書類にも記載していなかったのです。調査官はにこりともせず、「我々には履歴が届いていますので」と言い残しました。

このように、税務署は“表には出ていない”取引履歴までも正確に追跡する力を持っているのです。

銀行口座の調査はどこまで遡る?

「相続時の調査は過去5年くらいじゃないの?」と多くの人が思いがちです。しかし実際には、被相続人(亡くなった方)の銀行取引について、税務署は過去10年分を遡って調査するのが一般的です。

調査で注目されるのは、次のような動きです:

  • 死亡直前の大口出金(入院中でも)

  • 子や配偶者の口座への定期的な送金

  • 預金額に比して不自然に少ない生活費や支出履歴

  • 「行き場のないお金」の流れ(入金先が曖昧な出金)

たとえば、ある高齢の父親が亡くなる2年前から毎月50万円を子どもに送金していたケース。



口頭では「生活費を助けてくれていた」と話していたものの、贈与契約書もなければ、送金理由を記録したメモもなかったため、税務署は「贈与ではなく名義預金。相続財産に含めるべき」と判断しました。

 

銀行の「振込明細」や「窓口出金伝票」は、思っている以上に詳細な情報を含んでいます。



そして、それらは税務署から金融機関への調査依頼で必ず入手されます。

 

あなたの預金がどこへ流れたのか、誰の名義だったのか、何のためだったのか――その全てが「見えている」のです。

家族名義でも油断できない“実質管理”の概念

 

「これは息子の口座だから関係ない」「妻の通帳に預けているだけだから」

 

こうした言い訳は、税務署に一蹴されます。

 

なぜなら、名義人が誰かではなく、“誰が実質的に管理していたか”が重要だからです。

 

税務調査では次のようなチェックが入ります。

 

  • 通帳と印鑑は誰が保管していたか?

  • 口座の管理画面(ネットバンキング)は誰が操作していたか?

  • 送金の目的と、送金後のお金の使われ方はどうだったか?

  • 口座名義人が口座の存在自体を知っていたか?

 

たとえば、私のクライアントで「息子名義の口座を親が開設し、通帳も印鑑も親が保管していた」ケースがありました。

 

当然、税務署はこれを「名義預金」と判断し、相続財産に組み入れました。

 

息子さん本人は「大学時代からの口座だった」と主張していましたが、管理履歴から見て「実態的に親が所有していた」と判断されたのです。

 

つまり、“名義”と“実態”の乖離がある場合、税務署は必ず“実態”を優先して判断するのです。

 

この概念を知らずに、「家族だから大丈夫」「名義は分けてるからOK」と考えるのは、非常に危険です。

 

 

3. 名義預金とは何か?よくある誤解と判断基準

名義預金=実態のない“偽装贈与”

「これは子ども名義の通帳ですし、もう何年も前からの積立なので問題ありません」



税務調査の現場で、こう語るご家族は少なくありません。しかし、税務署がそこで注目するのは「名義」ではなく、「そのお金を実際に誰が所有・管理していたのか?」という実態です。

 

名義預金とは、実際の贈与が成立していないにも関わらず、形式上だけで資産を移動したように見せかける“偽装贈与”のことです。



たとえば、子ども名義の口座に毎年100万円ずつ振り込んでいたとしても…

 

  • 通帳は親が持っている

  • 印鑑も親が管理している

  • 子どもはそのお金の存在すら知らない

 

こうした状態では「実際に贈与されたとはいえない」と税務署は判断し、名義預金として相続財産にカウントされてしまいます。

 

贈与とは、「あげる人の意思」と「もらう人の受け取る意思」が一致し、その証拠が存在していることが必要です。

 

口頭で「子どもにあげたつもりだった」と主張しても、実態が伴っていなければ、それはただの“偽装”に過ぎないのです。

名義預金とされる4つの共通パターン

名義預金と判定されやすいケースには、いくつか明確な“共通点”があります。



以下は、私がこれまでに携わってきた相続税調査の現場で、高確率でアウト判定されてきた4つの典型パターンです。

 

  1. 親が通帳・印鑑を持ち続けていたケース

     → 子の名義でも管理実態が親なら、実質は親の財産。

  2. 贈与契約書を交わしていない・もらった側の同意もない

     → 贈与は“双方の意思表示”が必要。形式が欠けていると否認されやすい。

  3. 通帳の存在を子ども自身が知らなかった

     → 受け取る意思がない時点で贈与は不成立。形式だけでは通らない。

  4. 預金の利子・配当を親が受け取っている

     → 利益の帰属先が親のままなら、「名義貸し」と見なされる。

 

これらは、税務署側が「名義預金」と認定する際のチェックポイントになっているため、1つでも該当すれば注意が必要です。



また、本人が良かれと思ってやったことであっても、形式・実態・証拠のいずれかが欠けていれば、言い逃れはできません。

 

贈与と思っていたのに…否認される事例

「相続税対策のつもりで、毎年100万円を娘に贈っていたんです」



そう語ったのは、80代の男性。確かに振込履歴はありました。

 

しかし、振り込まれていたのは娘さんの口座ではなく、父親が20年前に開設し、ずっと印鑑も通帳も管理していた口座でした。

 

娘さん自身はその口座の存在を知らず、使ったこともなかったとのこと。



税務署はすかさず「これは実質的にお父様の資産であり、贈与とは認められません」と判断。



結果、合計約1,000万円が相続財産に加算され、追徴課税も含めて約350万円を納税することに…。

 

さらに厳しいケースでは、以下のような状況もありました。

 

  • 「結婚祝いのつもりで贈ったつもり」→ 贈与契約も記録もなく否認

  • 「孫の学費用に積み立てた」→ 子どもが使っておらず、管理は祖父だったため否認

  • 「生活費として渡した」→ 渡した証拠はなく、親の通帳から出金しただけで贈与不成立

 

これらの事例が示すのは、「気持ち」だけではダメだということ。

 

たとえ相手のためを思って行動していたとしても、それを税務的に証明する“見える証拠”がなければ、ただの形式にすぎないのです。

 

4. 税務署にバレた実例|名義預金と相続税トラブルのリアル

死亡直前の出金が課税対象に

通帳に記された「亡くなる直前の多額引き出し」は、税務署が特に注目する典型的な“フラグ”です。

 

死亡前に100万円以上の出金があると、その使途が説明できなければ、「みなし相続財産」として相続税の対象になる可能性があります。

 

実際に担当したケースでは、葬儀費用として引き出した現金10万円を申告し忘れ、通帳の残高と相続申告に齟齬が生じたことで、税務署から重加算税に問われた例もあります。



良かれと思って行った出金であっても、「何に、誰のために使ったか」をきちんと記録しておかなければ、いざというときに“隠蔽”と見なされるリスクがあります。

契約書がなく贈与と認められなかったケース

「生前贈与した証拠として贈与契約書は必要?」という疑問はわりと多く聞かれますが、実は贈与契約書がなくても贈与と認められたケースもあります

 

たとえば、長女に対して毎年一定額が積み立てられていた口座(通帳)の通帳を最後に正式に手渡すという行為において、税務署はこれを贈与の意図が明確と判断し、名義預金とはならず贈与と認められた判例も存在します。

 

一方で、このように贈与契約書がなくてもOKなケースは例外的であり、一般的には「贈与の意思」と「受領の意思」を文書化しておくのが安全策です。

親の通帳を子が使っていたことによる重加算税事例

「妻名義の通帳を親が使っていた」など、形式と実態が乖離していたため名義預金とされ、重加算税が課税された実例もあります。

 

たとえば、親が息子の名義口座を、通帳も印鑑も管理し、自身の資金を振り込んでいたケース。

 

表面的には「贈与だ」と唱えても、税務署は「実際に管理・利益を得ていたのが親」と判断し、相続財産として加算+重加算税の対象としました。

 

こうしたケースが示す教訓は「名義」ではなく「実態」で判断されるということ。真の所有者が誰なのか、日頃から明確にしておかないと、思わぬ重罰を受けることになります。

 

まとめ

  1. 死亡直前の出金…用途の記録がないとみなし相続財産にされる危険あり。

  2. 契約書なしのグレー贈与も認められる例外も存在するが、安全策は文書化。

  3. 名義と実態が一致しないと重加算税の対象に。形式だけでは通用しない。

 

5. 税務調査で課税対象になる“やってはいけない行動”集

タンス預金の落とし穴

「銀行にあると税務署にバレるから」と言って、現金を引き出してタンスや自宅の金庫に保管しておく…意外と多くの家庭で行われている行為です。

 

しかし、その“安心感”には大きな落とし穴があります。

 

先日、あるご夫妻のケースで、亡くなる直前に200万円を現金で引き出し、自宅金庫に保管していた例がありました。

 

税務署の調査当局が提示した「出金伝票」と「通帳残高の記録」から、「使途不明の大口出金」と判断されてしまったのです。

 

結果的にこの金額は、“なかったことにできるわけではなく”、相続財産として加算され、遅延による延滞税も合算されてしまいました。

 

「銀行に口座を残すよりマシだろう」との認識にも関わらず、「証拠がない=存在しないのと同じ」と見なされてしまうのが税務署の厳しい審査の現実です。

子ども名義の口座にまとめて資金移動

生前の相続対策として「子ども口座へまとめて移しておけば安心」という判断にもリスクがあります。

 

ポイントは、“まとめて移す”という行為自体が不自然である点です。

 

ある高齢の方の事例で、500万円すべてを一度に大学生の息子の口座へ移動したケースがありました。

 

当然、その使い道や体系的な分割計画がないと、税務署は「まとめて贈与」とみなし、贈与税や相続税の対象額として査定しました。

 

節税目的に思えても、計画性や意図が説明できなければ、“見せかけ贈与”として逆効果になる恐れがあります。

記録を残さず口約束で贈与したケース

「○○のために渡したから」と口頭で贈与を済ませようとするのも要注意です。

 

書類で残していないと、後から言った言われただけでは信憑性に欠け、「口約束=証拠にならない」と判断されかねません。

 

実際の事例では、祖父が孫に毎月10万円を援助していましたが、正式な契約書も記録も一切なしでした。

 

調査の結果、「贈与とは認められず、親の通帳の一部として扱われた」ため、追徴課税と重加算税まで課せられてしまいました。

 

「思いはあっても、正式な記録に残さないと“なかったことになる”」という税務署の対応に、多くの人が驚くパターンです。

 

やってしまいがちな行動 リスク内容
タンス預金や現金引き出し 証拠がなく“隠匿”と見なされる
子ども名義への一括資金移動 計画・書類がなければ贈与と認められない
口約束のみでの贈与 書類なしでは立証できず追徴対象に

 

6. 安心・合法に資産を移すための生前贈与の進め方

暦年贈与の非課税枠を活用する方法

「毎年110万円以下の贈与なら非課税」と聞いたことがある方も多いでしょう。

 

これは 暦年贈与の基礎控除制度であり、1月1日から12月31日までに受けた贈与額が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要です。

 

しかも複数の子どもに対して毎年活用すれば、生前から計画的に数千万円を移していくことも可能です。

 

ただし、注意点もあります。2024年1月以降の改正により、相続開始前7年以内の贈与分は相続財産に加算されるようになりました。

 

つまり、贈与の年数が少ないと、相続税の「持ち戻し」で節税効果が失われることがあります。

相続時精算課税制度の基本と注意点

「暦年贈与より多くの金額を一括で移したい」という方には、相続時精算課税制度が有効です。

 

贈与者(父母など)が60歳以上、受贈者(子・孫など)が18歳以上であれば、最大2,500万円まで非課税で贈与できるメリットがあります。

 

ただしこの制度を選択すると、その後は暦年贈与との併用不可となる点に注意が必要です。

 

また、一度選んだら撤回できませんし、年間110万円を超えた贈与は期間無制限で相続財産に加算されるルールもあります。

 

「暦年贈与より多くの金額を一括で移したい」という方には、相続時精算課税制度が有効です。

 

安心・合法な贈与には書面としての証拠が不可欠です。

 

  • 贈与契約書には以下5点を明記するのがしっかりした形式です。

    1. 誰があげるのか(贈与者の氏名・住所)

    2. 誰にもらうのか(受贈者の氏名・住所)

    3. いつ贈与するのか(契約日・実行日)

    4. 何を贈与するのか(内容・金額等)

    5. どのように移すのか(銀行振込等)

  • 2通作成し、贈与者・受贈者それぞれが保管し、「割印」を押せば改ざん防止にもなります。

  • 保管方法のポイント:原本は紙で大切に保管し、紛失が心配な場合はスキャン・バックアップも有効。ただし、原本の保存を基本としてください。保管期間は贈与税の除斥期間や相続税加算期間を踏まえて最低7〜10年が推奨されます。

 

贈与者(父母など)が60歳以上、受贈者(子・孫など)が18歳以上であれば、最大2,500万円まで非課税で贈与できるメリットがあります。

 

ただしこの制度を選択すると、その後は暦年贈与との併用不可となる点に注意が必要です。

 

また、一度選んだら撤回できませんし、年間110万円を超えた贈与は期間無制限で相続財産に加算されるルールもあります。

贈与契約書の書き方と保管方法

安心・合法な贈与には書面としての証拠が不可欠です。

  • 贈与契約書には以下5点を明記するのがしっかりした形式です:

    1. 誰があげるのか(贈与者の氏名・住所)

    2. 誰にもらうのか(受贈者の氏名・住所)

    3. いつ贈与するのか(契約日・実行日)

    4. 何を贈与するのか(内容・金額等)

    5. どのように移すのか(銀行振込等)

  • 2通作成し、贈与者・受贈者それぞれが保管し、「割印」を押せば改ざん防止にもなります。

  • 保管方法のポイント:原本は紙で大切に保管し、紛失が心配な場合はスキャン・バックアップも有効。ただし、原本の保存を基本としてください。保管期間は贈与税の除斥期間や相続税加算期間を踏まえて最低7〜10年が推奨されます。

 

通帳・印鑑の管理を移す重要性

最も重要な点の一つが、名義人である受贈者(子や孫)が通帳・印鑑を管理することです。

  • 通帳やネットバンキングの管理が贈与者のままになっていると、「実質的に管理していたのはあくまで親である」として、名義預金と見なされるリスクがあります。

  • 受贈者が自ら使用・管理している記録があるほど、贈与の真正性が認められやすくなります。

 

7. 今すぐ使える!贈与・相続対策テンプレート集

贈与契約書テンプレート

生前贈与を合法かつスムーズに進める上で、贈与契約書のテンプレートを活用することは非常に効果的かつ安全な第一歩です。

 

  • ACNコラムでは、暦年贈与を念頭に、贈与契約書の基本的な書き方と雛形が提供されています。テンプレートありで、初めてでも安心です。

  • 各金融機関(銀行や信用金庫)のサイトでも、Word形式・PDF形式の贈与契約書雛形が用意されていることが多く、記入例付きで即使えて便利です。例えば、千葉銀行の雛形文書など。

振込履歴の記録シート

授受の履歴を記録に残す「振込履歴の記録シート」は、贈与の正当性を証明するうえで欠かせません。



テンプレートの直接提供例は少ないですが、以下を参照して自作するか、表計算ソフトなどを使って簡便に作成することをおすすめします。

 

  • 振込年月日・金額・振込元・振込先・目的の列を設けて一覧化すれば、税務調査時に迅速に証明資料として利用可能です。

財産管理のチェックリスト

相続や贈与を進める上で、「誰が通帳や印鑑を管理しているか」などを整理するためのチェックリストも有用です。

こちらもテンプレート化されている事例は少ないですが、自作のテンプレートに以下を含めてください。

  • 通帳の保有者(贈与者/受贈者)

  • 印鑑の保管責任者

  • ネットバンキング(ログイン情報)の管理状況

  • 贈与契約書や贈与記録の保管場所

  • 相続時精算課税制度など、適用制度の選択状況

  • 贈与の目的や背景に関する説明資料の有無

 

テンプレート種別 概要・目的
贈与契約書テンプレート 双方の合意内容を正式に記録、法的証拠として有効
振込履歴記録シート 客観的な送金証明を一覧化し、税務調査対応に備える
財産管理チェックリスト 書類・通帳・印鑑の管理状況を見える化し、「名義と実態」の整合性確認に

8. よくある疑問とその答え|Q&A

親が認知症になったときの口座管理は?

認知症を発症した親の預金管理に関しては、原則として成年後見制度を利用することが求められます

 

親が判断能力を喪失していると認められる場合、子どもであっても自由に口座から引き出すことはできません。

 

ただし、2021年に全国銀行協会が示した指針では、成年後見制度を利用せずとも、一定の条件を満たすことで家族が代理で引き出し可能な場合があることが示されています。

 

例えば、親の意思を尊重する委任契約など、事前に具体的な合意と記録を整えておくことが重要です。

 

ただし、金融機関によって判断が異なるため、必ず事前に確認を。

毎月の仕送りは贈与になるのか?

生活費や教育費を目的とした毎月の仕送りであれば、原則として贈与税はかかりません

 

このような目的の資金移動は「扶養義務に基づく生活費」として認められるためです。

 

ただし、以下のような場合は贈与税の対象になる可能性がありますので注意が必要です。

  • 趣味や投資など、生活費以外の目的に使われた場合

  • 不定期で高額な仕送りを行っている場合

対策として、金額や目的が明確な証拠(領収書など)を保管し、毎月一定額を送ることが望ましいです。

申告漏れに気づいたらどう対応するべき?

贈与税の申告漏れに気づいた場合、できるだけ早く「期限後申告」または「修正申告」を行うことが最善の対応です

 

放置すると、延滞税や加算税といったペナルティが大きくなります。

 

具体的には、

 

  • 自主的に修正申告すれば、過少申告加算税(0〜15%)などを軽減できる可能性があります。

  • 故意の未申告と認定されると、重加算税(最大50%)や無申告加算税が課されるリスクがあります。かつ、税務調査のタイミング次第では「お尋ね」で発覚することもあるため、早めの対応が安心です。

 

申告期限から6年間(場合によっては7年間)が時効の目安となりますが、時効を過ぎても高額なペナルティを防げるわけではありません。

9. まとめ|“合法な資産移動”が家族の未来を守る

書類・記録・分割の3つを意識する

  1. 書類(贈与契約書など)

    書面は法的にも証拠としても極めて重要です。金額や目的、時期、贈与者と受贈者の意思を明確に記録し、両者が保持することで調査時にも有効に機能します。

  2. 記録(振込履歴・領収書・用途メモなど)

    「証明できる証拠」を積み重ねるほど、調査時に説得力が増します。現金移動ほどリスクが高まる以上、振込での移動と記録保存は基本です。

  3. 分割(暦年贈与・相続時精算課税制度の併用)

    少額贈与を毎年継続したり、大きな贈与を相続時精算課税制度で一括整理したりと、適切な制度選択と戦略的な資産移転が、合法かつ効率的な対策の鍵となります。

この三点が揃えば、家族や税務署にも「正当な財産移動」であると認められる確率が格段に高まります。

専門家に相談すべきタイミング

いつプロに相談すべきか?そのタイミングは以下の通りです。

 

  • 相続対策を検討し始めた 早期段階

  • 親の贈与や資産移動の初期計画段階

    → 制度選択や書類準備が曖昧な時点で専門家の意見を取り入れると安心です。

  • 相続発生直前の急な資金移動を考えているとき

  • 海外資産の整理・引継ぎが関係する場合

    → 課税対象や報告義務、国際条約の影響まで見通したアドバイスが必要です。

  • 税制改正の影響が自身に適用されるか不安な場合

    → 2024〜2025年の改正で「贈与の持ち戻し期間」が3年から7年に延び、「婚姻・子育て資金の一括贈与非課税措置」が延長されたなどの変更があるため、最新情報と照らし合わせるのが重要です。

今後の税制改正を見据えた備え方

2025年の税制改正では、贈与に関する持ち戻し期間の延長、新たな非課税措置の延長だけでなく、基礎控除や所得控除の見直しも進行しています。

 

これらの改正は、贈与や相続の”タイミング”にも影響します。

 

法律が変わるたびに資産移動の最適な戦略や制度の組み合わせも変化するため、継続的な見直しと対応が必要です。

 

税務署も資産の「見方」「評価方法」に対して高度な照会を行える時代です。

 

変更前の制度利用も狙い目ですが、失敗しないよう情報のアップデートと検証を怠らないことが重要です。

 

まとめ

  • 合法かつ円滑な資産移動は、“書類・記録・分割”の三本柱に支えられています。

  • 専門家への相談は早いほど安心。後悔のない対策を目指しましょう。

  • 税制は常に変化している。未来を見据えた対応と柔軟な戦略設計を。

 

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    大山 俊郎

    大山俊郎税理士事務所代表税理士

    同志社大学商学部卒業後
    父が経営する年商50億の会社へ入社

    二代目経営者として
    現場での下積みから
    会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事

    特に
    ・銀行との交渉
    ・経理の改善
    ・資金繰り
    ・事業承継の対策
    などに尽力

    ある親族との同族問題で自社の株式
    を売却をした経験から
    「会社のヒト・モノ・カネの管理は
    会社と経営者一族の運命を左右する」
    ことを痛感

    日本随一の
    「同族会社経営を経験した税理士」
    として事務所を開設し
    「会社にお金を残す節税マニュアル」
    を開発
    全国の同族会社の経営者・法人経営者
    向けに「会社を強くする仕組み作り」
    を指導

    大山俊郎のプロフィール

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