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スーツは経費になるのか?個人事業主の場合【起業家必見】

大山 俊郎
監修者 大山 俊郎

大山俊郎税理士事務所 代表 大山俊郎(おおやま としろう)

光熱費や人件費高騰による大幅なコストアップ・・・
しかし、中小企業の多くはコストアップを販売価格に反映できず苦しんでいます。「薄利多売」の時代は終わり、中小企業でも「値上げ」が必須の時代になりました。
この時代を勝ち抜くために、弊所独自の「強み集中」利益最大化経営計画を通して中小企業の支援を行っています。

代表的な著書は「SWOT分析を活用した【根拠ある経営計画書】事例集」。

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確定申告の時期になり、個人事業主の方々のお手伝いをしていると、色んな質問をお受けします。

 

その中でも、「確定申告あるある」と言っても良いほどに、よく質問をされるのがこちら!

 

 

「僕が着ているスーツって、経費で落ちないんでしょうか?」

 

 

という質問です。

 

税理士として、この質問は本当に良く聞かれる質問なんですよね。そこで今回のテーマは「スーツ代は、経費で落ちるのか?」です。

 

今回の記事を読むとこんなことが分かります。

 

  • サラリーマンと個人事業主に対する税務署のスタンスの違い
  • 会社社長と個人事業主に対する税務署のスタンスの違い
  • 個人事業主でもできる、スーツ代を経費にする方法

 

早速、お話していきますね。

 

「スーツ代は経費にできますか?」税理士に聞くとNGって答えるはず

 

「あのー、スーツは経費で落ちないのでしょうか?」という質問をすると、多くの税理士は
おそらくこのように返答するでしょう。

 

「うーん、基本的にはNGですね」「なかなか経費にするのは難しいかもしれない」って。

 

では、同じ質問を税務署の担当者に相談してみたら、どうなるのでしょうか?

 

おそらく・・・・「そんなこと、ダメですよ!」と即答されてしまうはずです。

 

経営者として大事な会議に出席する時、普段の営業活動の時など、ビジネスマンにとってお客様のところへ伺う時には正直スーツ着用は当たり前のことです。

 

女性は、スーツの他にも化粧品やバッグ、アクセサリーなどにお金がかかりますので、経費でできたら良いのになぁと思う気持ちも分かります。

 

では、どうして「スーツは基本的に経費では落とせない」のでしょうか?

 

「スーツが経費になるのか」についての過去の判決が関係している!

 

さかのぼること、昭和49年。京都地裁での判例を元にお話していきますね。

 

個人事業における、「被服費(服代のこと)」について争われた判例になります。

 

結論から言うと、この判決によって被服(服のこと)に係る費用は「家事費」とするとなりました。

 

このような判決が下された理由は、3つあります。

 

  • 理由1.衣服は誰もが必要なアイテムであること
  • 理由2.衣服には個人的な趣味や嗜好が大きく影響すること
  • 理由3.衣服の耐用年数にも、個人でかなりの差が出ること

 

このような理由により、事業経費ではなく、家事費と考えるものとすると判断されました。家事費とは、あくまでも個人的な支出ですから、経費として落とすことはできないのですね。

 

でも、特別に認められるケースもある

 

しかしながら、中には経費として認められるケースもあります。

 

例えば、警察職員の服装を思い浮かべてください。

 

あくまでも職務中に着用するものであり、そこに個人の趣味嗜好は関係していません。また、職務以外で着用していたら・・・ちょっと変な人になってしまいます(笑)

 

警察官のような限られた職業以外にも、認められるケースはあります。

 

例えば、職務として必ず着用しなければならないもの、また職種や地位に応じで、一定の品質・種類・数量の衣服がどうしても必要な場合などです。

 

「こういうのは自分の趣味ではないけれど、勤務時間中は必ず着なければならない」

 

というケースですね。

 

このような場合には「家事費」ではなく、「家事関連費」と判断されることがほとんどです。

 

さて、先ほどは「家事費」だから経費計上は認められないとお話しましたが、「家事関連費」とはどのようなものとされているのか気になりますよね?

 

簡単に言うと「家事関連費」は、生活費と事業経費の両方の性格を持ち合わせているという特徴があります。

 

スーツが経費に?法律上はどうなっているの?

 

先ほどの裁判では、納税する側が「これは、業務を遂行する上で絶対に必要である」ということを証明できなかったので、必要経費とは認められませんでした。

 

この裁判が、現在にいたるまで被服に関する支出の基本となっていると言っても良いでしょう。

 

でも、ここまでは裁判上のお話。

 

実際の法律(条文)は、どのようになっているのでしょうか?

 

所得税法という「法律」

 

スーツが経費になるか、についての条文である所得税法(第45条)を見ていきます。

 

ここには【家事関連費等の必要経費不算入等】という規定があります。

 

こちらの規定の一節に

 

「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」

 

と書いてあります。ここがポイントになります!

 

詳しく見ていきますね。

 

 

 

キーポイントとなるのが、「家事上の経費」と「関連する経費」という2つの言葉です。

 

まず「家事上の経費」とは、生活費などの個人的な費用になります。

 

そして「関連する経費」とは、個人的費用と業務費用の両方の性質を持ち合わせている、家事関連費のことです。

 

スーツはビジネスをしていく上で必要なアイテムですが、結婚式やお葬式にも着用していきますよね。ですから、スーツなどの被服費に関しては「家事関連費」に区分されるというのです。

 

そこで、こんな疑問が浮かぶはず!

 

個人と事業経費のダブルの性質を持った(つまりみなさんの好きな(笑)グレーゾーン)、そんな家事関連費。

 

・・・ということは、経費でも落とせる可能性があるんですよね?という、みなさんの声が聞こえてきます!

 

実は、この法律には補足があるのです。

 

所得税法施行令第96条、所得税法基本通達45を見てみましょう。

 

これによると、家事関連費については

 

仕事をしていく上で絶対に必要で、必要である部分を明らかに区分することができれば、その部分は経費にしてよい」という補足があります。

 

もっと柔らかい表現に直せば、プライベートとビジネスの部分が混同している場合は、きちんと区分ができれば経費としても認められるということですね。

 

明確な区分!これが、重要ポイントです。

 

H26年~流れが変わる?特定支出控除

 

今回ご紹介しているテーマで、大きく流れが変わったのは平成26年。会社員に適用される所得控除のうち「特定支出控除」が、大きく見直されました。

 

特定支出控除とは、「会社員が自費で購入したスーツや書籍が職務の遂行に必要なものであれば必要経費として認められ、ある計算方法によって控除できる」という制度です。平成26年までは、5つの項目しか認められなかったものが、3つ追加されて、8項目が認められるようになりました。

 

以下に、まとめてみました。

 

1.通勤費
2.転勤費用
3.仕事に必要な研修費用
4.仕事に必要な資格取得費用
5.単身赴任で勤務地から自宅へ帰るための交通費
6.図書費(仕事で必要な本や新聞の購入)
7.衣服費
8.交際費(ビジネス上お付き合いのある会社との接待費など)

 

この最後の3項目が新たに認められるようになったのです。法律でハッキリしたのは、非常に大きなことですね。

 

ちょっと本音を言います

 

「スーツを経費で落とせないでしょうか?」と言われて、すぐに「ダメです」という返答をしない税理士もいます。

 

「本当に仕事上でしか使わないというのなら、ちょっと頑張って経費で落とせるようにしてみます」と伝えてあげたいというのが本音です。

 

でも、あまり大きな声で言えない理由もあります。

 

それは、趣味嗜好が大きく関係した高価なスーツや宝石類、高級時計まで、経費で落とせないのかと無理難題を突き付ける事業主様がゼロではないからです。

 

まとめ

 

あくまでも個人的な考えになりますが、あまりに高額で目が点になってしまうようなスーツ、ビジネス上は通用しないアイテムでない限りは、個人事業主が経費として計上して確定申告をしても問題ないのではないかと思っています。

 

でも、根底にあるのは、あくまでも仕事上着用するスーツであるということ。

 

プライベートでも着用すると最初から分かっているのなら、支出の一部を個人的な家事費と計上するのも1つの方法です。

 

(会計ソフトに入力する)仕訳(しわけ)は、どうなるでしょうか?

 

スーツを現金で買った場合…

 

(借方)

消耗品費  (ビジネスで使う部分)

事業主貸  (生活で使う部分)

 

(貸方)

現金(スーツ屋さんに支払った金額)

 

となりますね。

 

なんでもかんでも、経費にはできないということは注意してくださいね。

 

 

大阪谷町の税理士、大山俊郎でした。

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    大山 俊郎

    大山俊郎税理士事務所代表税理士

    同志社大学商学部卒業後
    父が経営する年商50億の会社へ入社

    二代目経営者として
    現場での下積みから
    会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事

    特に
    ・銀行との交渉
    ・経理の改善
    ・資金繰り
    ・事業承継の対策
    などに尽力

    ある親族との同族問題で自社の株式
    を売却をした経験から
    「会社のヒト・モノ・カネの管理は
    会社と経営者一族の運命を左右する」
    ことを痛感

    日本随一の
    「同族会社経営を経験した税理士」
    として事務所を開設し
    「会社にお金を残す節税マニュアル」
    を開発
    全国の同族会社の経営者・法人経営者
    向けに「会社を強くする仕組み作り」
    を指導

    大山俊郎のプロフィール

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