創業融資、自己資金なしで受けられる?税理士が解説【実例集付き】
「自己資金なしで、創業融資は受けられるのだろうか・・・」
「自己資金がないからこそお金を借りたい」
起業家のあなたは、このように考えているのではないでしょうか。
結論から言うと、「創業融資は、自己資金なしで受けることはできません。」
自己資金なしで創業融資を申し込むことのデメリットが大きいわけです。
ただ、実際に、税理士である私にご相談をいただくお客様に、こんな方がおられました。
「自己資金がないので、創業融資を受けられないと思っていたのですが、実際は自己資金になるものをカウントしていないだけで、結果、創業融資を受けることができました!」
実は、「自己資金がない」と思っていたけど、本人も認識していない自己資金があり、その結果創業融資を受けることができるケースがあります。自己資金なしで創業融資を受けられる可能性はゼロではないわけですね。とは言え本来は、創業融資を自己資金なしで受けることは難しいです。
そしてもしかしたら、現時点であなたは自己資金がない状態かもしれません。ですが、そのような状態でも創業融資を受けることができるかもしれない制度も存在します。
「ずっと注目していた物件が今、空きができて、資金はないけど、開業するなら今しかない」
「開業しようと思っている市場(業界)に追い風となるチャンスが舞い込んできた」
というケースはあると思います。
この記事では、自己資金なしで創業融資を受けることができるのか、自己資金がない場合はどうすれば良いのか。
さらには注意点まで、実際に多くの創業融資相談を受けてきた税理士の立場から「実際に融資を受けられるのか」「融資を受けられるケースと受けられないケースの違い」という観点を重視して解説いたします。
創業融資の担当者から直接聞いた話も織り交ぜて解説しますので、ぜひお役立てください。
この記事を読み終わった際には、自己資金なしでも創業融資を受けられるのかについて理解でき、次のステップに進めるようになっているはずです。
※会社設立や節税の情報がほしい人は、以下のプレゼントをLINEで受け取ってくださいね
LINE登録でもらえる無料プレゼント
1.ひとり法人化マニュアル
2.会社設立解説動画
3.節税マニュアル
1. 自己資金なしで創業融資を受けるのは難しい
自己資金なしで創業融資を受けるのは難しいです。
なぜなら日本政策金融公庫には、自己資金がなくても(または金額が少なくても)融資を受けられる制度がありますが、実際に融資を受けるとなると、いくつも越えるべきハードルがある、という特徴があるためです。
具体的には2つのハードルがあります。
- 審査担当者の審査内容
- 自己資金なしで創業融資を受けられる制度の要件が難しい
1−1 審査担当者の審査内容は「事業の継続性」を重要視している
1つ目のハードルとして、審査担当者の審査内容を把握する必要があります。
なぜなら、審査担当が何を見るのかをわかっていないと、創業融資を受けることができないからです。実際に、融資の元審査担当からお聞きした中では、自己資金がなかったとしても、「事業の継続性」というものを重要視しているそうです。
そもそも創業融資を行っている代表的な金融機関である日本政策金融公庫では、中小企業を応援する目的で設立されたものです。つまり中小企業の創業を応援するという意図があることから、自己資金の要件はあるものの、それ以上に「融資をすることで事業が継続する」ということを重視しているわけです。
その中で、「事業の継続性がある」と判断する根拠として「自己資金をためている経緯」を重点的に確認するということです。
なので、表面上は、預金残高などの自己資金がなくても良いという制度はありますが、実際には、審査の過程で「継続性があるかどうか」を見られるので、「起業するために、自己資金を継続して貯める意思があるか」という点が、確認されるでしょう。自己資金を継続して貯める意思があることが、これから起業する人にとっての「信用」になります。
たとえば、自己資金をためていたが、「家族の大病により治療費の支払いで自己資金がなくなってしまった」などのケースもあります。
このケースの場合、本人に継続して自己資金を貯める意思があったわけなので、継続性自体は存在すると考えられるので、自己資金自体なくても相談はしてみるべきだと考えています。
※日本政策金融公庫の場合、「通帳のお金の動き」を非常に重視します。「通帳のお金の動き」に不審点があると自己資金と認められない可能性があります。
1-2 自己資金なしで受けられる創業融資制度は1つのみで現実的ではない
自己資金なしで受けられる創業融資制度はありますが、現実的ではありません。
なぜ現実的ではないのかというと、実際、創業するときは、開業までの時間的余裕がないのが通常
だと思いますが、唯一自己資金なしで、創業融資を受けられる制度(特定・・)の要件を満たすためには、時間がかかりすぎてしまうからです。
具体的には、以下のようになっています。
特定創業支援等事業の要件 上記のように、実際に、この要件を満たすためには、以下のことを実践する必要がありますが、時間的には2か月ぐらいかかります。 自己資金なしで受けられる創業融資制度には、産業競争力強化法に定める 「認定特定創業支援等事業」というものがあります。ただし、この制度は現実的ではありません。 なぜなら、実際に自己資金なしの状態で、創業融資を検討している状況を考えると、あまりにも手間と時間がかかってしまうからです。 具体的には、たとえば大阪市の場合、認定特定創業支援等事業を受けるには、
大阪市ホームページ 特定創業支援等事業について~大阪市が発行する証明書により、登録免許税の軽減等の支援が受けられます~ より引用 このような手続きを経る必要があり、最長6か月程度の期間が必要です。 |
以上のことから、 専門家として、現実的に「自己資金なしで起業できるといっても、やはりある程度の自己資金は持っておくべきです。」とアドバイスしています。
新創業融資の自己資金要件は実際どうなのか? 厳密に言うと、自己資金なしで受けられる創業融資制度はもう1つあります。 それは、新創業融資という制度で、「今お勤めの会社と同じ業種で・・・」であれば、自己資金要件を満たす、という制度です。 参考:新創業融資制度 ただ、結論、この制度の目的は「自己資金がない人を支援する」ことではなくて、「民間金融機関では融資を受けられないけど、事業の計画性がある人を支援する」ことであるため、私の経験からすると、現実的に融資の返済ができる見込みがないと、審査が通らない可能性は十分にあります。 制度の説明で上記のように記載があったとしても、実際に自己資金なしで創業融資を受けられるかどうかは、話が別だと考えておくべきでしょう。 |
2. 融資を受けられた事例・受けられなかった事例
2章では、実際に、自己資金なしで融資を受けた事例と、受けられなかった事例を紹介・解説していきます。
1章でお話ししてきたように、お客様によってケースバイケースです。
あなたのケースに当てはまる場合もあると思いますので、参考にしていただければと思います。
この第2章の内容は、新しい事例が出るつど、随時更新していきます。
2-1 受けられた事例
預金残高が生活費しかない状態から、1,400万円の創業融資を受けることに成功した事例
・業種 飲食業(焼肉)
・個人事業主
・受けられた融資の金額 1,400万円(公庫800万円、地方銀行600万円)
・資金の用途:設備資金および運転資金
・事業計画書のポイント(どういう点を主張したのか)
起業準備段階での高い計画性と行動力があった。飲食店を開業するために必要な問題解決スキルを勤務を通して身に着けていた、店舗の立地の良さ、退職金の入金予定あり。
良い場所が空くまで粘り強く待っていた、物件の所有者と人間関係を構築していた、タイミングが来た時点で物件の契約をした。
結果、客観的にみても事業の継続性、本人の計画性も高いため、融資が通ったのではないかと考えています。あくまでも予定なので退職金の入金予定があれば自己資金があると見てくれるわけではありません。立地が良かったことなどもあり、融資を受けることができたものと考えられます。
融資が成功した結果、お店の経営も上手くいっており、現在は株式会社を設立して法人化されています。
2-2 受けられなかった事例
次に、実際に、私たちがサポートした内容ではありませんが、元公庫担当者からお聞きした融資が受けられなかった事例について解説していきます。
ー自己資金なしで、日本政策金融公庫の融資を受けられなかった事例
・業種:集客コンサルタント
・個人事業主
・融資を申請した金額:800万円
・資金の用途:運転資金
・結果:ゼロ回答
・融資が下りなかった理由、融資担当者が確認したポイント:
創業融資を申し込む直前に多額のローン(事業とは無関係な高級車を購入)及びビジネスローンを組んでいたため、実質的に自己資金マイナスとみられてしまった可能性が高い。飲食店を開業するのに飲食店の経験が全くなかった。飲食店の経験がない状態では審査に落ちる可能性が高いのに、融資の申し込みをしてしまったことが失敗の原因。
Tips! 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)に関しては受けられている事例がほとんどない この資本性ローンは、「自己資金」は不要とされているものの、審査の対象となるのは下記の方に限定されています。
このように記載されていますが、実態としては資本性ローンがを受けられる事例はほとんどありません。 |
3. 実際の相談は自己資金なしの状態ではない場合が多い
実際の相談では、自己資金なしの状態ではないケースが多いので、改めてご自身の状態を確認しましょう。
金融機関の考える自己資金は、預貯金通帳で確認できる出どころの確かな現預金です。ですが、自己資金に含められるものは他にもあるのでそれらを全て含めるべきです。
なぜなら、自己資金に含められるものについても、創業融資をする条件である計画性や事業の継続性の証拠になるからです。
たとえば、意外と知られていない、自己資金に含められるものには以下があります。
意外と知られていない「自己資金に含められるもの」一覧
・退職金(予定含む)
・生命保険の解約金(解約、入金済みであることが必須)、子供の学資保険
・家族・親族から贈与を受ける
・創業してから数か月経過していて、すでに事業のために使った経費
・不動産などを現物資産として申告する
・出資者を募る(第三者割当増資)
・配偶者・子供名義の預貯金通帳にコツコツ貯めたお金
・自己資産を売却したお金
ちなみに、保証協会や銀行が考える自己資金は、
「原則として事業を開始しようとされる方が当該事業に充てるために用意した金額から借入金等の負債を控除したもの」となっています。
参考:大阪府制度融資
つまり、「自己資金に含められるものの合計金額」から「創業融資を申請するまでにローンを組んだ場合のローン金額」を引いた金額になります。「自己資金に含められるものの合計金額」から「ローン金額」を引いた金額がマイナスになった場合は、基本的に自己資金の要件を満たさないため創業融資は難しくなります。
例:
自己資金に含められるものの合計100万円ーローン金額90万円=10万円
→ ○(融資可能性あり)
自己資金に含められるものの合計100万円ーローン金額300万円=▲200万円
→ ×(融資は困難)
※住宅ローンは「借入金等の負債」ではない、と解釈してもらえることが多いです。
自己資金に含められるものを今一度確認し、自分の自己資金がいくらなのか確かめておきましょう。
4. 自己資金なしの状態から創業融資を受けるための方法
自己資金なしの状態から、創業融資を受けるための方法について解説します。ただ、そもそも自己資金がない状態から創業融資を受けることはとても難しいです。今すぐに開業しなければ、千載一遇のチャンスを逃してしまう!という場合に、奥の手として、参考にしてください。
4-1 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受ける
1章で説明したとおり、産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受ける方法です。詳しくは、こちらをご覧ください。
特定創業支援等事業の要件を満たすためには、時間的には最長6か月以上かかります。
自己資金なしで受けられる創業融資制度には、産業競争力強化法に定める「認定特定創業支援等事業」というものがあります。ただし、この制度は現実的ではありません。なぜなら、実際に自己資金なしの状態で、創業融資を検討している状況を考えると、あまりにも手間と時間がかかってしまうからです。
4-2 自己資金に含められるものを再確認して融資を申請する
2つ目の方法は、自己資金に含められるものを再確認して融資を申請する方法です。
3章で解説してきた通り、自己資金という言葉自体が曖昧なものす。つまり自己資金は「現預金だけ」ではないので、現時点で通帳に残高が少なくなっていても、すぐに預金残高が増える正当な見込みがある可能性があるか、確認しましょう。
自己資金に含められるものに関しては、3章をご覧ください。
創業融資を受けたいけど自己資金がない場合は、あきらめるのではなく自己資金に含められる ものを再確認して融資を申請しましょう。
4-3 自己資金を増やして融資を申請する
3つ目の方法は、自己資金を増やして融資を申請する、という方法です。
自己資金なしで、かつ、今まで解説してきたような「事業の継続性」に自信がない場合は、わざわざ手間暇かけて融資の申請をしてしまうよりも、かえって早く融資を受けられるようになるからです。
創業融資を申請するにあたって自己資金がない場合で、かつ、今まで解説してきたような「事業の継続性」に自信がない場合は、、、実際に自己資金を増やしてから融資を申請しましょう。
4-4 「今開業しなければチャンスを逃す、けど、開業する打ち手がない」場合は税理士に相談してみる
最後の手段としては、税理士に思い切って現状を正直に相談してみましょう。
自分ひとりで考えていても、時間が無駄になる可能性が高いし、答えに行きつかないからです。
ただ、税理士はこのような相談を多く受けている税理士もいて、この後どうすれば良いかがはっきりすると思います。たとえば、以下のような質問を、創業融資の相談を多く受けている税理士にしてみると良いでしょう。
・創業融資を受けるにあたり、(自分では自己資金がないと思っているが)現預金以外で自己資金の条件を満たしているか?(自己資金に含められるものを再確認)
・もし自己資金の条件を満たしていない場合、他に「自己資金と見てくれるもの」を増やすことはできないか?(自己資金を増やして融資を申請する)
・「自己資金以外」の条件でアピールできるポイントがあるので総合的に判断して融資を受けられるか?
これらの質問をすることで、税理士の立場からしても、解決する問題が具体的になっているので、何かしら提案できます。ですので、今開業しなければチャンスを逃すけど打ち手がない、という場合でも税理士に相談してみましょう。
Tips! 自分の事業の継続性を確実にするために、税理士のアドバイスを活用しよう 今まで解説してきた通り、融資は、「事業の継続性があるかないか」つまり、あなたがお金を返してくれるかどうかを見ています。だから、自己資金がない状態でも「事業の継続性があるかないか=潰れないか」が、はっきりとわかれば、チャンスは切り開かれます。 じゃあ、どうすれば、あなたの事業に継続性を持たせることができるか、というと、「潰れない仕組み」を知っている専門家(=税理士)にアドバイスをもらうのが一番です。
なので、「事業が儲かる仕組み」を理解している専門家である税理士に相談することおすすめします。特に、創業融資の相談を多く受けている税理士に、起業段階から相談するのがおすすめです。 |
5. 創業融資については、大山税理士事務所にご相談ください。
創業融資については、大山税理士事務所にご相談ください。確かに、自己資金なしで創業融資を受けるのは難しいです。理由は、審査内容、要件が厳しいですし現実的ではないからです。ですが、私たちが支援をし、自己資金なしでも融資が成功した事例もあります。
事前準備や審査に不安がある方のお悩みを解決することが可能です。実際に、融資成功率98.5%という実績があり、資料作成や面談対策など、多くのお客様をご支援しているので、この記事を読んだあなたが次に取るべき、始めるべきアクションがはっきりするはずです。
日本政策金融公庫の創業融資だけでなく、制度融資(信用保証協会が保証する創業融資)についてもご相談可能です。
まずは、無料相談がご利用できますのでお問い合わせください。
6. まとめ
以上、自己資金なしで創業融資を受けられるのか、さらに受けるための方法について解説してきました。自己資金なしで、創業融資を受けるのは基本的には難しいです。なぜなら、実績がなくても融資を受けられる仕組みである創業融資を受けるためには、「事業の継続性」を示す必要があるからです。
「事業の継続性」があるか?という視点は、事業自体に継続性を持たせることができるなら、自己資金を貯めることもできるはずなのに、なぜ自己資金がないのか?という視点を持たれてしまうことになります。
これまで説明してきた以下のことを実践すれば、自己資金なしの状態からでも融資を受けることができるはずです。
・特定創業支援等事業
自産業競争力強化法に定める「認定特定創業支援等事業」という制度があります。ただし、実際に自己資金なしの状態で、創業融資を検討している状況を考えると、あまりにも手間と時間がかかってしまうため、この制度を使うことは現実的ではありません。
・自己資金に含められるものを再確認して融資を申請する方法
創業融資を受けたいけど自己資金がない場合は、(審査は厳しくなりますが)すぐにあきらめるのではなく自己資金に含められるものを再確認して融資を申請しましょう。
・自己資金を増やして融資を申請する
自己資金なしで、かつ、今まで解説してきたような「事業の継続性」に自信がない場合は、わざわざ手間暇かけて融資の申請をしてしまうよりも、かえって早く融資を受けられるようになるからです。
あなたの事業が成功することにぜひお役立てください。
電話でもお申し込みOK
06-6940-0807
【受付時間】10:00〜18:00(土日祝除く)
大山 俊郎
大山俊郎税理士事務所代表税理士
同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社
二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事
特に
・銀行との交渉
・経理の改善
・資金繰り
・事業承継の対策
などに尽力
ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感
日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
を指導