不動産管理会社は大家さんに代わりインボイスを交付できる?
インボイス制度の導入によってさまざまな業種が影響を受け、新しいシステムの導入や経理業務が多くなったことで大変になった、と感じている人も多いでしょう。
もちろん不動産業も影響を受けている業種のひとつです。
中でも不動産管理会社は
「家賃を預かっているだけなのにインボイス発行を求められたけど、誰の名前で交付すればいいの?」
「今までの契約書はそのまま使っていいのかな?」
など、不安や疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、インボイス制度が不動産管理会社に及ぼす影響や、必要な対応について解説していきますので、参考にしてみてくださいね。
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1.インボイス制度が不動産管理会社に及ぼす影響
不動産業の取引は「どんな不動産を何の目的で誰に貸すのか」によって、インボイスの影響や対応が異なります。
まず不動産業では物件を貸す人を「大家」「賃貸人」などと呼び、物件を借りる人を「入居者」「貸借人」、そして賃貸人と貸借人の仲介役を担っている立場を「不動産管理会社」といいます。
それぞれ「誰と」やりとりをしているのかが違うので、インボイスによる影響も違ってきますが、中でも不動産管理会社は「賃貸人と貸借人」の双方とやりとりするケースが多いため、他の2つの立場よりもインボイスの影響を受けやすいとされているのです。
ここでは次の3つのパターン別に、不動産管理会社が受ける影響について見ていきます。
- 一般消費者との取引
- 課税事業者との取引
- 免税事業者との取引
自分はどのタイプが多いのか、参考にしてみてくださいね。
一般消費者との取引
一般消費者との下記の取引は、基本的に「非課税」となります。
- 土地の譲渡や貸付け
- 土地を貸している際に係る更新料または名義書換料(権利処理手数料)
- 住居用のアパートや借家に係る家賃(但し貸付期間が1ヵ月未満を除く)
- 住居者が共同で使用すると認められる共益費や敷金
そのため、上記に該当する取引しかしていない不動産管理会社や大家は、インボイス制度への対応が不要です。
ただし土地を「駐車場または駐輪場」として貸し付けたときは、借りる人が一般消費者であっても一定条件を満たす場合、課税取引となるのでインボイス制度が関係してきます。
- 駐車場もしくは駐輪場として地面の整備、フェンスの設定、区画、建物、いずれかをおこなっている
- 車両もしくは自転車の管理をしている
土地の貸付に関しては「車もしくは自転車がとめやすいように整備しているか、管理している場合は、課税取引になる可能性がある」と覚えておくと賢明でしょう。
事業者(課税事業者)との取引
店舗や事務所、駐車場や駐輪場を貸している不動産管理会社は、インボイス制度による影響が大きくなります。
もし不動産管理会社や大家がインボイス制度に登録していないと、借りる事業者は仕入税額控除ができないので納税する消費税額が増加。
それにより家賃の値下げや、インボイス発行ができる不動産会社に乗り換えてしまうことも否定できません。
ゆえに課税事業者との取引がある不動産管理会社や大家は、状況に応じてインボイス発行事業者への登録をするかどうか、選択が迫られる可能性が考えられます。
事業者(免税事業者)との取引
借りる事業者が免税事業者の場合は消費税の納税義務がなく、インボイス発行を求められることはないので、貸す側もすぐにインボイス制度の影響を受けるとは限りません。
ただし、免税事業者がなにかしらの都合により課税事業者に転換したときや、課税事業者との取引が増えた際にはインボイス発行を求められるケースも考えられるでしょう。
インボイス制度の登録は強制ではないので、登録しないという選択肢もあり得ます。しかし「自分にはインボイス制度は関係ない」と他人事にするのではなく、「もしかしたらインボイス発行を求められるかもしれない」と考え、どう対応していくのか検討しておくことも必要でしょう。
2.不動産管理会社がやるべき3つ対応
不動産管理会社に必要なインボイス対応は、大きく分けて次の3つが考えられます。
- 家賃
- 仲介手数料
- 立替金
不動産業や仲介役である不動産管理会社ならではの対応もあるので、しっかりと覚えておきましょう。
家賃
家賃に対するインボイス制度の対応は、賃貸借契約書を再び結びなおすか、不足事項を補うための追加書類の作成または覚書の締結によって対応する必要があるでしょう。
それによって不動産管理会社は立場上、大家(賃貸人)と入居者(貸借人)の両方とやり取りして進めるので、業務の煩雑化が予想されます。
混乱を招かないように、賃貸借契約書の見直しや、入居者とどのように説明して進めていくのが良いのかなど問題点を明確にして、対策を講じていきましょう。
仲介手数料
不動産管理会社では、大家(賃貸人)と入居者(貸借人)との仲介によって発生する「仲介手数料」を請求しています。
仲介手数料は、入居者から支払われた家賃等を大家に支払う際に控除していたり、別途請求していたりと、さまざまなケースがあります。
大家に支払う金額から控除している場合は、支払明細書をインボイス対応に改訂して、控除項目を記載することで対応が可能です。また仲介手数料以外にも控除する項目がある場合には、同様の対応でインボイス対応ができます。
別途請求する場合は、通常の適格請求書の発行と変わらないので、必要事項を記入して請求書を発行しましょう。
立替金
ビルなど多くのテナントが入るような不動産を管理している場合、不動産管理会社が水道光熱費を立替払いして払い、後日各テナントへ請求しているケースがあります。
このような場合、公共料金業者から不動産管理会社宛てにインボイスが発行。しかし各テナントが仕入税額控除の適用を受けるには、テナント宛てのインボイスの交付が必要になります。
そのため不動産管理会社は、立替金精算書とともに公共料金業者から交付されたインボイスを写しを添付することでインボイス対応が可能です。
3.不動産管理会社のインボイス交付
住居用のアパートや、事務所を貸す際に必ずしも「大家⇔借主」で成立する訳ではありません。
中には不動産管理会社が間に入って「大家⇔不動産管理会社⇔借主」となるケースもあるでしょう。
しかしこのような場合、インボイスを交付は誰がするのでしょうか。ここでは不動産管理会社のインボイス交付について解説していきます。
原則は賃貸人がインボイスを交付する
仲介役として大家と借りる人との間に不動産管理会社が介入したとしても、原則インボイス交付は「大家(賃貸人)」です。
通常インボイス制度は、事前に適格請求書発行事業者に登録して「登録番号」の交付を受けます。
しかし仲介役の不動産管理会社は代理で、大家の名称と登録番号を書いたインボイスを発行できる「代理交付」が認められています。
そのため原則としては「賃貸人がインボイスを発行する」または「不動産管理会社が賃貸人の名称および登録番号でインボイスを発行する」の2択です。
不動産管理会社がインボイスを代理交付も可能
不動産業界においても原則インボイスを発行するのは「賃貸人」ですが、不動産管理会社などのように、売り手と買い手の仲介役にあたる立場にある者は「委託者に代わってインボイスを発行できる媒介者交付特例制度」を利用できます。
媒介者交付特例制度を使えば、不動産管理会社の名称および登録番号を記載したインボイスを、貸借人の代わりに交付できるのです。
しかし媒介者交付特例の適用には、2つの条件があります。
①貸借人と不動産管理会社、双方がインボイス発行事業者に登録していること
②賃貸人は取引前に不動産管理会社にインボイス発行事業者である旨を伝えていること
上記の条件を満たすことで不動産管理会社は、わざわざ賃貸人にインボイスを発行してもらったり、賃貸人の名称を記載したインボイスの発行をしたりする手間を減らせるのです。
4.宅地建物取引業者の取引には特例がある
インボイス制度には「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引」という特例が設けられています。
宅地建物取引業者の取引にはこの特例が該当するケースは「宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入」 です。
たとえば宅地建物取引業者が、個人(インボイス発行不可)から転売目的で建物を購入したケースが、上記の特例に該当します。
条件が「棚卸資産に該当するもの」に限定されており、棚卸資産とはいわば在庫のことです。そのため賃貸目的で建物を購入しても「在庫」とはならないので、棚卸資産には該当しません。
ゆえに宅地建物取引業者が「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認めらえる取引」の特例を利用できるのは「個人(インボイス発行不可)から転売目的で建物を購入した場合」に限られるということです。
なお上記の取引で宅地建物取引業者が購入した建物を譲渡する際に、わざわざ請求書を発行せずに売買契約書で済ませることも考えられます。
しかし売買契約書に仕入税額控除の適用に必要な事項を全て書いたとしても、売買契約書と適格請求書は本来の役割が違うという観点から、売買契約書のみの保存では仕入税額控除が認められない可能性が高いです。
そのためインボイス制度導入以降は購入者が課税事業者である場合、売買契約書に加えて適格請求書の交付準備をしておくのが賢明といえるでしょう。
5.不動産管理会社が受けるインボイス制度の影響を知ろう
不動産管理会社は一定の条件をクリアしていれば、大家(賃貸人)の名称での代理交付または自社の名称でのインボイス発行、と2種類の交付方法が可能です。
また国が定める特例に該当する取引もあるため、事前にしっかりとルールを把握しておかなければ、いざというときに対応が遅れてしまう可能性があります。
まずはこの記事を参考に考えられる問題点を明確にして、対応策を講じていきましょう。
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大山 俊郎
大山俊郎税理士事務所代表税理士
同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社
二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事
特に
・銀行との交渉
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・資金繰り
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などに尽力
ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感
日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
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