保証協会の創業融資|必要書類から審査対策まで解説
創業融資の申請を考え始めた時、多くの方が「保証協会への提出書類の準備」という大きな壁にぶつかります。
「創業計画書は具体的に何を書けばいいのか」
「必要書類を全て揃えられるだろうか」
といった不安を抱えながら、手探りで情報を集める日々を送られているのではないでしょうか。
当事務所は10年以上にわたり、創業融資の申請支援に携わってきました。
その経験の中で多く寄せられる相談が「保証協会指定の書式への記入方法」についてです。
実は、保証協会指定の書式の中でも特に創業計画書は、ビジネスモデルの説明から収支計画の立て方まで、経験者でなければ気付きにくいポイントが数多く存在します。
そこでこの記事では、法人・個人事業主それぞれの立場で必要となる書類を、実際の審査での重要度に応じて整理してご紹介します。
さらに、信用保証委託申込書や創業計画書といった重要書類については、審査担当者の視点に立った具体的な記入例をお示しします。
これまでの経験から得た「書類作成の際によくある失敗とその対処法」についても、実例を交えながら解説していきます。
初めての創業融資申請に不安を感じている方も、この記事を参考に、一歩一歩着実に準備を進めていただければと思います。
保証協会の審査を通過するためのポイントを、実践的な視点からお伝えしていきましょう。
この記事を読むと、下記の4つが理解できます。
- 必要書類には保証協会指定の書式があることが理解できる
- 必要書類は法人と個人事業主で異なることが理解できる
- 申請から融資実行までの全体的な流れが理解できる
- 審査のポイントと重要な確認事項が理解できる
保証協会の創業融資に必要な書類一覧
基本的な必要書類と入手方法
保証協会の創業融資で必要な書類は、法人と個人で大きく分かれます。
法人の場合、以下の書類が基本となります。
・創業計画書(保証協会指定の様式)
・信用保証委託申込書
・法人の履歴事項全部証明書(発行後3ヶ月以内)
・定款
・法人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
・代表者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
・納税証明書(法人税・事業税)
一方、個人事業主の場合は以下の書類が必要です。
・創業計画書(保証協会指定の様式)
・信用保証委託申込書
・代表者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
・開業届の写し
・納税証明書(所得税・事業税)
これらの書類は以下の場所で入手できます。
・創業計画書、信用保証委託申込書:保証協会の窓口またはウェブサイト(実際には銀行員からもらえることが多いです)
・履歴事項全部証明書、印鑑証明書:法務局
・納税証明書:税務署の窓口
・開業届:税務署で発行された受付印のある控え
なお、事業内容や融資の条件によって追加書類が必要になることがあります。
※最近ではSDGsに関する記載が求められた当事務所のお客様事例がありました。
例えば、設備資金を借り入れる場合は設備の見積書、店舗を借りる場合は賃貸借契約書の写しなどが求められます。
不明な点がある場合は、事前に保証協会に確認することをおすすめします。
書類の有効期限には特に注意が必要です。証明書類は発行後3ヶ月以内のものが求められるケースが多いため、申込のタイミングを考慮して取得しましょう。
創業計画書の記入例と作成のコツ
創業計画書は融資審査の要となる最重要書類です。
実施事業については、誰に何を提供するのかを明確に記載します。
例えば「20代〜30代の女性向けにオーガニック食材を使用したカフェを運営」といった具体的な表現が効果的です。
市場規模と集客予想は、具体的な数字を示すことが重要です。
・商圏人口:半径2km以内の人口15万人
・ターゲット層:20〜30代女性5万人
・1日の来店予想:平日20名、休日40名
このように、根拠のある数字を記載します。
収支計画は以下の項目を具体的に記入していきます。
・売上高:客単価×来店数×営業日数
・売上原価:仕入れ費用、材料費など
・人件費:アルバイト時給×人数×時間
・固定費:家賃、水道光熱費、保険料など
なお、売上予測は現実的な数字にすることが大切です。過度に楽観的な数字は審査で不利になる可能性があります。
事業の強みは、以下のような点を具体的に記載します。
・経営者の経験やスキル
・商品やサービスの独自性
・立地の優位性
・競合との差別化ポイント
記入する際のよくある失敗として、以下の点に注意が必要です。
・数字の根拠が不明確
・競合分析が不十分
・資金計画と収支計画の不整合
・事業の実現可能性が低い計画
実際の作成にあたっては、保証協会が提供するフォーマットに沿って記入していきましょう。
不明な点がある場合は、窓口で相談することをおすすめします。
信用保証委託申込書の書き方と見本
信用保証委託申込書は、保証協会への正式な申込書類です。誤記入があると再提出が必要になるため、慎重に記入しましょう。
申込人欄では以下の点に注意が必要です。
・商号または名称:法人登記と完全一致させる
・代表者氏名:印鑑証明書と同じ表記にする
・設立年月日:法人の場合は登記簿の日付
・事業所の住所:賃貸借契約書と一致させる
事業内容欄には、以下の要素を含めて記載します。
・主な取扱商品やサービス
・販売方法や営業形態
・主要な取引先(予定を含む)
・事業の特徴や強み
資金使途は具体的に記入することがポイントです。例えば「店舗内装工事300万円、厨房機器購入150万円、運転資金50万円」というように、金額の内訳まで明記します。
月商計画では、創業後3カ月程度の売上予測を記載します。ただし、売上予測は創業計画書の数字と整合性を取ることが重要です。
申込書の記入で陥りやすい失敗は以下の通りです。
・押印が印鑑証明書と異なる
・数字の合計が合っていない
・事業内容の説明が抽象的
・住所や電話番号の記載ミス
なお、保証協会によって様式が異なる場合があります。記入前に必ず該当する保証協会の最新様式を使用しているか確認することをおすすめします。
納税証明書の取得と準備の手順
納税証明書は融資審査で重要視される書類の一つです。
3カ月以内に発行されたものが必要となります。
法人の場合、以下の証明書が必要です。
・法人税の納税証明書(その1:納付すべき税額と納付した税額及び未納税額)
・法人事業税の納税証明書
・法人都道府県民税の納税証明書
個人事業主の場合は以下を準備します。
・所得税の納税証明書(その1:納付すべき税額と納付した税額及び未納税額)
・個人事業税の納税証明書
・個人住民税の納税証明書
取得手順は以下の通りです。
税務署または都道府県税事務所の窓口へ行く
▼
納税証明書交付請求書に記入
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本人確認書類を提示
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手数料を支払う(1通400円程度)
▼
その場で発行
またオンラインでの取得も可能です。e-Taxを利用すれば、窓口に行かずに証明書を入手できます。※ただし、事前に電子証明書の取得が必要です。
取得時の注意点として以下があります。
・未納がある場合は証明書が発行されない
・税金の納付から反映まで時間がかかる
・住所変更後は新しい住所で取得する
・代理人が取得する場合は委任状が必要
なお、創業直後で納税実績がない場合は、住民税の納税証明書のみで審査されることもあります。詳細は保証協会に確認しましょう。
保証協会の創業融資で書類審査に通るコツ
事業計画書の審査基準と対策
保証協会の審査担当者は、事業計画書を以下の4つの観点から評価します。
収益性の審査、市場性、実現可能性、資金計画の4つです。
それぞれ見ていきましょう。
収益性の審査では、以下の点が重視されます。
・客単価設定の妥当性
・来店予測の現実性
・固定費と変動費の算出根拠
・利益率の業界標準との比較
市場性については、こうした要素を確認します。
・商圏分析の具体性
・競合店との差別化要因
・ターゲット層の明確さ
・市場規模の把握度合い
実現可能性では、主に以下を評価されます。
・創業者の経験やスキル
・人員計画の具体性
・仕入先や協力会社の確保状況
・必要な許認可の取得見込み
資金計画では、以下のポイントをチェックされます。
・設備投資の具体的な内訳
・運転資金の算出根拠
・借入返済計画の妥当性
・自己資金の確保状況
審査を通すためのポイントは以下の通りです。
- 数字の根拠を明確に示す
- 競合分析を詳細に行う
- リスク対策も記載する
- 業界標準的な数値から大きく外れない
なお、審査では楽観的すぎる計画よりも、現実的な計画が評価されます。
人件費や経費は余裕を持った設定にすることをおすすめします。
必要書類の提出時期と有効期限
保証協会への書類提出は、申込から融資実行まで約1〜2カ月かかります。そのため、各書類の有効期限を考慮した準備が必要です。
証明書類の有効期限は以下の通りです。
・履歴事項全部証明書:発行後3カ月以内
・印鑑証明書:発行後3カ月以内
・納税証明書:発行後3カ月以内
・確定申告書:直近2期分
・残高証明書:発行後1カ月以内
書類の提出時期は以下の順序で行います。
- 創業計画書の提出(融資希望日の2カ月前まで)
- 基本的な証明書類の提出(1カ月半前まで)
- 追加書類の提出(1カ月前まで)
- 契約書類の提出(2週間前まで)
計画的な準備のポイントは以下の通りです。
・証明書類は余裕を持って取得する
・有効期限切れに注意して取得時期を調整する
・追加書類の要請に迅速に対応できるよう準備する
・不足書類があると審査が遅れるため、チェックリストを活用する
なお、書類の不備が見つかった場合、再提出に時間がかかり、融資実行が遅れる可能性があります。
特に創業時期が決まっている場合は、スケジュールに余裕を持たせることをおすすめします。
審査担当者が重視するポイント
保証協会の審査担当者は、書類審査と面談を通じて主に4つの観点から評価を行います。
事業の実現可能性、返済能力の評価、事業継続性、経営者の資質の4つです。
それぞれ見ていきましょう。
事業の実現可能性については、以下の点を重視します。
・経営者の業界経験や専門知識
・ビジネスモデルの具体性
・市場ニーズの把握度合い
・競合との差別化要因
返済能力の評価では、以下を確認します。
・収支計画の妥当性
・資金繰り予測の現実性
・自己資金の準備状況
・他の借入金の有無と返済状況
事業継続性については、こうした要素をチェックします。
・商圏分析の精度
・集客計画の具体性
・仕入先や取引先の確保状況
・リスク対策の備え
経営者の資質では、以下のポイントを見ています。
・創業への熱意
・経営知識の習得状況
・家族の理解や支援体制
・生活基盤の安定性
実際の審査では、担当者は提出書類の内容に一貫性があるかも確認します。
例えば、創業計画書と収支計画の数字が異なっていたり、面談での説明と書類の内容が矛盾したりすると、審査に悪影響を与える可能性があります。
なお、審査担当者は創業者の誠実さも重視します。不明な点は率直に相談し、指摘された事項には真摯に対応することが重要です。
よくある不備と対処法
保証協会への書類提出で最もよく見られる不備をまとめました。
事前に確認することで、スムーズな審査につながります。
書類作成時の一般的な不備は以下の通りです。
・押印が印鑑証明書と一致しない
・記入した金額の合計が合わない
・日付や有効期限が古い
・必要事項の記入漏れがある
・書類の順番が指定と異なる
計画書における不備では以下が目立ちます。
・売上予測の根拠が不明確
・必要経費の計上漏れ
・資金使途が具体的でない
・収支計画と資金計画の不一致
・事業内容の説明が抽象的
これらの不備への対処法は以下の通りです。
- 提出前にチェックリストを作成する
- 記入済み書類を一度コピーして確認する
- 金額は電卓で複数回確認する
- 期限切れの書類は再取得する
- 不明点は事前に窓口で確認する
なお、書類の不備が見つかった場合は、速やかに修正または再提出することが重要です。
審査の遅延を防ぐため、担当者からの指摘には迅速に対応しましょう。
保証協会の創業融資で必要な書類の重要ポイントまとめ
・法人と個人事業主で必要書類が大きく異なる
・創業計画書は融資審査の最重要書類である
・証明書類は発行後3カ月以内のものが求められる
・信用保証委託申込書は押印や記載内容の正確性が重要
・納税証明書はその1と事業税の両方が必要
・事業内容により追加書類が求められる場合がある
・設備資金の借入には見積書の添付が必須
・賃貸物件の場合は賃貸借契約書の写しが必要
・書類提出から融資実行まで約1〜2カ月を要する
・創業計画書には具体的な数値根拠の記載が重要
・資金使途は細かい内訳まで明記が必要
・e-Taxでの納税証明書取得には電子証明書が必要
・代理人による書類取得には委任状が必須
・提出前のチェックリスト作成が推奨される
・書類の不備は審査の遅延につながる可能性が高い

大山 俊郎
大山俊郎税理士事務所代表税理士
同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社
二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事
特に
・銀行との交渉
・経理の改善
・資金繰り
・事業承継の対策
などに尽力
ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感
日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
を指導