創業融資は個人事業主の「法人成り」では使えない?【結論:使えないが方法はある】
「法人成り(法人化とも言います。以下同じ。)して創業融資を受けたいんだけど・・・
創業してから2年以上も経っているので、「創業」には当たらないのでしょうか?」
こんな心配していませんか?
確かに創業には当たらないので、日本政策金融公庫の「創業」融資を受けられないのです・・・
実は、創業した後に税務署に2回分(2期分)確定申告書を提出している場合、日本政策金融公庫では、優遇される創業融資の枠組みではなく、優遇されない通常の融資として処理されてしまいます。
※確定申告書は必ず確認されます。
ですが、
まずは安心してくださいね。
以上が概要になります、これだけだと理解しにくいのでこの記事で詳しく解説しました。
最後までこの記事を読んでもらえば、この概要でお話しした内容が理解できるはずです。
なお、創業融資がどんな融資なのかまず知りたい方は「創業融資ってどんな融資?開業資金を賢く調達する方法【税理士が解説】」で紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。
1.公庫の創業融資は、法人成りの場合「使えません」が・・・
創業融資の対象となるのは、「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」です。
しかし個人で起業・開業をし、その後法人成り・会社設立をした場合その経歴は合算されます。
このため、確定申告を1期終えた個人事業から法人に移行した場合、それが2期目となり、創業融資の対象から外れる場合があります。
法人成りの場合、日本政策金融公庫の創業融資は「使えない」可能性があるわけです。
ですが・・・
日本政策金融公庫の創業融資制度は、起業家や中小企業等の起業や新規事業開始を支援するためのものです。
そのため日本政策金融公庫の創業融資制度の対象者は、
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えてい『ない』方
に限られています(日本政策金融公庫公式サイト)。
個人で開業し、1年後の確定申告を行った後に法人成りした場合、その事業の継続性が認められます。
その結果、個人と法人の事業の経歴は合算されます。
これにより法人成り後に2期目となり、「事業開始後、税務申告を2期終えて『いる』方」となる場合は、創業融資の対象から外れる可能性があります。
例えば、ある個人事業主が2年間事業を行い、その後税務申告を行う前に、同じ事業で個人から法人になった(法人成りした)とします。
この個人事業主が確定申告を行った後に法人成りした場合、法人としての事業はその個人事業主の経歴を引き継いでいるとみなされます。
その結果、法人成り後に2期目となり、法人の確定申告を行った場合には創業融資の対象から外れる可能性があるわけですね。
しかし、法人成りした後も資金調達が必要なケースがあります。
このケースでは大まかに次の2つの方法が考えられます。
①「中小企業経営力強化資金」の利用:
この融資制度は新たな取り組みを行う中小企業を対象としており、2千万円までなら無担保・保証人無しで利用できます。
②地方自治体の創業融資制度の利用:
創業融資制度は自治体でも設けられており、その条件は自治体によって異なります。
この点についてはこの記事の3章で詳しく解説しています。
2.創業融資(日本政策金融公庫)が使えない事例
では、具体的な実例を見てみましょう。
一つ目の事例として、Aさんの場合を取り上げます。
Aさんは、個人で開業し、2年分の確定申告を行った後に法人成りをした事例です。
Aさんは日本政策金融公庫の創業融資を申し込もうと考え事業計画書などの書類まで作成したのですが、相談した地元の金融機関に、「個人の履歴も含めて考えるから公庫の創業融資は使えない」と言われました。
結果として、Aさんは創業融資の対象とはならず、別の融資を選択せざるを得ませんでした。
二つ目の事例として、Bさんの場合を見てみましょう。
BさんもAさんと同じように個人事業主から法人へと移行したケースですが、Bさんは地元自治体の創業融資制度を利用しました。
Bさんの地元では、「創業した日から5年未満の個人事業主または中小企業」が対象となる制度があり、Bさんの事業はこれに該当しました。
このように、創業融資の選択肢は日本政策金融公庫だけではなく、地元自治体の制度も視野に入れましょう。
創業融資は新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方にとって大きな支援となります。
しかし、日本政策金融公庫の創業融資制度では、個人事業主から法人成りを行った場合、個人事業主としての事業経歴と法人としての事業経歴は合算されます。そうすると創業融資の対象から外れてしまう可能性があるわけです。
まとめると、個人事業主から法人への移行を検討する場合には、日本政策金融公庫だけではなく、中小企業経営力強化資金や地方自治体の創業融資制度など、様々な融資制度を調査し、自社に最適な選択をする必要があるわけです。
今回取り上げた例は一例に過ぎません。
創業融資の対象となるかどうかは、事業の具体的な状況や地域に よって、地元の制度や状況、そしてビジネスの性質によって大きく左右されます。
融資を選択する際は、自社のビジネスモデルとビジネスニーズに合わせた最適な融資プログラムを選択する必要があります。
さらに、法人成りのタイミングも重要です。事業の規模や将来の予測、または税制上のメリットなどを考慮に入れて、最適なタイミングを見極めることが重要です。
個人事業主から法人への移行手続きは単純ではなく、複数の要素を検討する必要があります。
これらの情報を基に、適切な戦略を立てることで、創業融資を最大限に活用できるようになります。
自社の状況と目標に最も適した解決策を見つけるために、専門家との相談や情報収集に時間を使う非常に価値のある投資と言えるでしょう。
新たな事業を始める際や、事業を拡大するためには、創業融資が資金調達手段として大変有効であり、それぞれの事業主が自身のビジネスに合った適切な融資を選ぶことが成功につながります。
この選択過程には、ビジネスの具体的な状況、事業計画、そして個々の融資制度の要件と手続きの流れを理解する必要があります。
また、創業融資を活用する際には、「資金の使途(使い道)が明確であること」が求められます。事業開始の初期投資、資材購入、人材雇用など、融資をどのように使用するのか、明確なビジネスプランとともに準備し、しっかりと示しましょう。
お金を貸す側は、お金を貸す=「投資」のリターンを見極めるため、財務計画や成長戦略などの詳細な情報を求めることが一般的です。
さらに返済計画も同様に重要です。
当然ですが、創業融資を受けたら、返済する義務も生じます。
そのため、返済能力と計画をしっかりと考え、自社の収益見込みと比較しましょう。
また、返済能力が不確実な場合や、返済スケジュールが厳しい場合は、融資のオプションを再検討するか、他の資金調達方法を探す必要があるかもしれません。
これらの要素を十分に考慮した上で、適切な融資プログラムを選択し、その融資を最適な方法で活用すれば、ビジネスの成功における重要なステップとなります。
3.「経営力強化資金」で公庫に申し込むのが正解です
個人で開業し、1年後の確定申告を行った後に法人成りした場合、日本政策金融公庫の創業融資の対象とはなりません。その理由は、個人での事業と法人での事業の期間が合わせて2年を超えているためです。
しかし、この場合でも他の資金調達の選択肢があります。
日本政策金融公庫の創業融資の要件は、「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」であるため、個人での確定申告を1期、法人での決算申告を1期行っている会社は、創業融資の対象とはなりません。
2つの資金調達の選択肢を説明します。
創業融資ではなく、経営力強化資金
まず、日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金制度に申し込みができます。
「新たな取り組み(新商品・新サービスの開発や新しいしくみやシステムの導入)により、新規顧客の開拓や売上・収益アップを行おうとする方」が対象で、最大2千万円まで無担保・保証人無しで利用できます。
この条件は厳しいように見えますが、しっかりとした事業計画を立てている事業者であれば融資が難しいわけではありません。
事業計画は融資の審査上、非常に重視されます。
創業融資の審査については、こちらの記事で詳しく解説しています。
4.創業融資申請に必要な準備書類と審査のポイント
個人事業主が創業融資を申請する際、適切な準備と対策が承認率を大きく左右します。ここでは必要書類と審査のポイントを詳しく解説します。
個人事業主が準備すべき7つの必須書類
創業融資の申請には以下の書類が必要です。
- 事業計画書(決算・資金計画を含む)
- 確定申告書および収支内訳書(直近2期分)
- 納税証明書
- 許認可が必要な業種の場合はその証明書
- 実際の事業用物件の契約書や不動産初期費用の見積書
その他
特に重要なのは事業計画書です。金融機関は、あなたの事業の将来性と返済能力を主にこの書類で判断します。
審査で重視される3つのポイント
審査では以下の3点が特に重要視されます:
- 返済能力の具体性
- 月々の売上予測が具体的な根拠に基づいているか
- 経費の見積もりが現実的か
- 返済原資が明確か
- 事業の実現可能性
- 業界経験やスキルは十分か
- 市場ニーズの裏付けはあるか
- 競合との差別化ポイントは明確か
- 資金計画の妥当性
- 必要資金の使途が明確か(運転資金または設備資金)
- 借入額は適切か
- 自己資金の準備はあるか
審査を通すための実践的なアドバイス
日本政策金融公庫の調査によると、個人事業主の創業融資審査における最も多い指摘事項は、事業計画の「具体性不足」です。以下の点に特に注意を払いましょう。
- 売上予測は、具体的な販売先や契約見込み先の情報を含める
- 同業他社の平均的な利益率や経費率を参考に、現実的な数字を設定
- 月次の資金繰り表で、返済財源を明確に示す
- 業界特有のリスクとその対策を明記する
事業計画書は金融機関との「対話の道具」です。単なる数字の羅列ではなく、あなたの事業への思いと実現可能性を伝える重要なツールとして、しっかりと作り込みましょう。
これらの準備と対策をしっかり行うと、創業融資の承認可能性は大きく高まります。不明な点がある場合は、日本政策金融公庫の窓口で事前相談を受けることをお勧めします。
5.地方自治体の創業融資制度に申し込む
もう一つ、地方自治体の創業融資制度も利用できます。
この制度の要件は、「創業した日から5年未満の個人事業主または中小企業」で、個人・法人通算しても5年以下であれば対象になります。
個人と法人の経歴を合わせて2年を超えている場合は、日本政策金融公庫の創業融資の対象外です。
しかし、その代わりに中小企業経営力強化資金や地方自治体の創業融資制度を利用することで、必要な資金を調達することが可能です。
これらの選択肢を検討し、あなたの会社に最も適した資金調達の方法を選んでください。
POINT
個人と法人の経歴を合わせて2年を超えている場合は、日本政策金融公庫の創業融資の対象外
6.まとめ
融資を活用する際には、ビジネスの成長に「プラス」の影響を与え、同時に「マイナス」の影響、つまり返済義務によってビジネスに過度な負担をかけないようにバランスを取ることが重要です。
法人成りして創業融資を受ける場合には、専門家のサポートを受けることができます。
まずは融資の無料診断を受けて、今後の計画を考えてみてください。
電話でもお申し込みOK
06-6940-0807
【受付時間】10:00〜18:00(土日祝除く)

大山 俊郎
大山俊郎税理士事務所代表税理士
同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社
二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事
特に
・銀行との交渉
・経理の改善
・資金繰り
・事業承継の対策
などに尽力
ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感
日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
を指導