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【事前確定届出給与】たった1日のズレで経費にならない?─役員賞与の届出期限を読み違えた会社の代償

大山 俊郎
監修者 大山 俊郎

大山俊郎税理士事務所
代表:大山俊郎(おおやま としろう)

中小企業の現場と経営に携わった経験を活かし、税務と利益最大化をサポート。
著書『SWOT分析を活用した【根拠ある経営計画書】事例集』も好評発売中!

近畿税理士会所属 税理士番号:127208
DREAM GATE認定アドバイザー
https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/oyamatax

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税理士にとって「期日」は特別な言葉

税理士として長く働いていると、「期日」という単語に妙に敏感になっていくのを感じます。



なぜなら、お客様の申告期限を1日でも間違えれば、それだけで信頼を失う仕事だからです。



期限を守ることは、税理士の信用そのものと言っても過言ではありません。

「事前確定届出給与」の届出書に潜む落とし穴

税理士業務の中で、会社の役員賞与に関わる届出書 ― いわゆる「事前確定届出給与に係る届出書」を提出する機会があります。



書類の中身ももちろん重要ですが、実はそこに書く「日付」こそが、税理士泣かせのポイントなのです。

この届出書は、提出のタイミングを間違えると、会社の損益に大きな影響を及ぼしかねません。



それほど「期限管理」がシビアな書類です。

では、次のケースで正しい提出期限を導き出せるでしょうか?

<事例>

決算日:令和7年7月31日

① 株主総会などの決議日:令和7年9月25日

② 職務執行の開始日:令和7年9月26日

③ ①または②のうち早い日から1か月を経過する日

④ 職務執行開始日を含む会計期間の開始日から4か月を経過する日

⑤ ③と④のうち早い日

この⑤が、届出書の提出期限にあたります。

「経過する日」っていつのこと?

①と②までは簡単ですが、③で多くの人がつまずきます。

まず、「①と②のうち早い日」を探します。

この例では、①の「9月25日」が早いですね。

次に、「1か月を経過する日」を求めます。

ここでの「経過する日」とは、期間がちょうど満了しようとしている日を意味します。

つまり、「まだ終わってはいないけれど、終わりの直前の日」。

したがって、この場合は10月25日となります。

一方で、「経過した日」と書かれていた場合は、「もう期間が過ぎた後の日」を指します。

この場合は10月26日が該当します。

④の計算と注意点

次に④を見てみましょう。



職務執行開始日(令和7年9月26日)が含まれる会計期間(令和7年8月1日〜令和8年7月31日)の開始日(令和7年8月1日)から4か月を経過する日を求めます。



結果は「令和7年12月1日」となります。

実は③の「10月25日」は誤り?

ここで注意したいのが、「国税通則法第10条」という法律です。



この法律では、期間の数え方について次のように定めています。

たとえば「9月25日から1か月を経過する日」を求める場合、

初日(9月25日)は含めず、その翌日(9月26日)を起算日とします。



そして、翌月同日(10月26日)の前日が「経過する日」となるのです。



つまり正解は「令和7年10月25日」となります。

年末の提出期限はどう扱われる?

一方、④の日付「12月1日」がもし休日に当たる場合、

税務署をはじめとした行政機関は、「行政機関の休日に関する法律」により、

12月29日から翌年1月3日まで休みと定められています。

 

 

このように休日と重なる場合、国税通則法第10条第2項で次のように規定されています。

「期限が日曜・祝日・その他の休日に当たるときは、その翌日を期限とみなす」

 

そのため、実際の提出期限は翌営業日(その年のカレンダーによる)となります。

正しい答えは?

最終的に、⑤に該当する正しい日付は



▶ 令和7年10月25日 です。

おわりに

普段何気なく扱っている「日付」ですが、税務の世界では1日の違いが大きな意味を持ちます。



税理士が「期日」という言葉に敏感になるのは、こうした法律上の厳密なルールを常に意識しているからなのです。

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    大山 俊郎

    大山俊郎税理士事務所代表税理士

    同志社大学商学部卒業後
    父が経営する年商50億の会社へ入社

    二代目経営者として
    現場での下積みから
    会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事

    特に
    ・銀行との交渉
    ・経理の改善
    ・資金繰り
    ・事業承継の対策
    などに尽力

    ある親族との同族問題で自社の株式
    を売却をした経験から
    「会社のヒト・モノ・カネの管理は
    会社と経営者一族の運命を左右する」
    ことを痛感

    日本随一の
    「同族会社経営を経験した税理士」
    として事務所を開設し
    「会社にお金を残す節税マニュアル」
    を開発
    全国の同族会社の経営者・法人経営者
    向けに「会社を強くする仕組み作り」
    を指導

    大山俊郎のプロフィール

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