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創業融資における保証協会活用のコツ|申請から審査通過までを徹底解説

大山 俊郎
監修者 大山 俊郎

大山俊郎税理士事務所
代表:大山俊郎(おおやま としろう)

中小企業の現場と経営に携わった経験を活かし、税務と利益最大化をサポート。
著書『SWOT分析を活用した【根拠ある経営計画書】事例集』も好評発売中!

近畿税理士会所属 税理士番号:127208

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創業融資における保証協会活用のコツ|申請から審査通過までを徹底解説

創業融資を受けたい。

 

でも、「日本政策金融公庫と保証協会、どちらを選ぶべきか」で悩んでいませんか?

実際、この2つには融資額や審査基準、返済期間など、様々な違いがあります。

 

結論:公庫と保証協会のどちらを選ぶかは、創業する業種、必要資金額、事業計画のレベル、地域性などを総合的に判断して決めます。

場合によっては両方を選ぶことで融資金額を最大限化することも可能です。

 

実は、創業融資の選択を誤る方の多くが、公庫と保証協会それぞれの特徴を十分に理解しないまま判断してしまっています。

保証協会の融資が必ずしも審査が通りやすいわけでもありません。

 

むしろ保証協会の審査と銀行の審査の「二重審査」になるため、より厳しくなるケースもあります

保証協会の創業融資は、地域に密着した金融機関との連携により、より柔軟な審査が期待できる一方で、独自の準備や対策も必要です

これが事実です。公庫よりも保証協会のほうが融資の「審査が甘い」という噂を聞いても、そのまま鵜呑みにしないよう注意が必要です。

 

この記事では、創業融資における保証協会の活用方法や審査のポイント、必要書類の準備から面接対策まで、実践的なノウハウをご紹介します。

これから創業融資の申請を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

この記事では主に下記の内容を解説していきます。

  • 公庫と保証協会の審査基準や融資額の違い
  • 創業融資の申請に必要な書類と準備方法
  • 面談での質問内容と効果的な回答戦略
  • 保証協会の3つの制度(創業関連・スタートアップ・再挑戦支援)の特徴

 

1. 創業融資の公庫と保証協会を比較、どちらを選ぶべき?

日本政策金融公庫

創業時における公庫と保証協会の違い

日本政策金融公庫の創業融資は、一般的な飲食店の場合で1,000万円前後の融資を受けることができます。

運転資金は最長10年、設備資金は最長20年と、比較的長い返済期間が特徴です。

審査は非常に厳しく、特に飲食店や小売業などの競合が多い業種では、詳細な市場分析や差別化戦略の提示が必須となります。

 

一方、保証協会は各地域の金融機関と密接に連携しており、地域特性を活かした事業計画であれば、より前向きな審査をしてもらえる場合があります

一般的な融資額は、飲食店で500万円~1,500万円、小売店で300万円~1,000万円程度です。

自己資金は融資額の10分の1以上が目安となりますが、事業計画の実現可能性や経営者の能力なども総合的に判断されます。

創業時の資金調達では、必要以上に大きな金額を想定するのではなく、事業規模や返済能力に見合った現実的な融資額を設定することが重要です。

固定費を抑え、段階的な成長を見据えた資金計画を立てることで、審査通過の可能性が高まります。

 

特に保証協会では、地域活性化への貢献度や事業の持続可能性も重視されるため、地域のニーズを踏まえた具体的な事業計画・経営戦略の作成が求められます。

 

公庫と保証協会のどちらを選ぶかは、創業する業種、必要資金額、事業計画のレベル、地域性などを総合的に判断して決めます。

場合によっては両方を選ぶことで融資金額を最大限化することも可能です。

 

両制度の特徴を理解し、自身の事業に適した選択をすることで、円滑な創業資金の調達が可能となります。

参考:大阪信用保証協会ホームページ

 

保証料は高いが審査は通りやすい保証協会の特徴

保証協会を利用する場合は、融資額に応じた保証料の支払いが必要です。

一般的な保証料率は0.28%~2.2%の範囲で、信用力によって変動します。

例えば、1,000万円を借り入れる場合、保証料は年間5万円~20万円程度となります。

ただし、多くの自治体で保証料の補助制度を設けており、実質的な負担を抑えることができます。

東京都の場合、創業支援特例などで保証料を全額補助する制度もあります。

 

また、金融機関にとっては保証協会の保証付き融資となるため、100%保証であれば貸し倒れリスクがなく、審査は比較的通りやすくなります。

経営者の属性や事業実績よりも、事業計画の具体性や実現可能性を重視した審査が行われます。

 

それぞれの融資実行までの期間と必要書類

公庫は申込から融資実行まで、通常1ヶ月程度で完了します。

 

インターネットでの申し込みも可能で、必要書類は創業計画書、資金計画書、収支計画書の3点が基本となります。

事業内容によっては許認可の取得状況や、賃貸借契約書なども必要になります。

なお、公庫では創業前や創業後間もない時期でも、オンラインで事前相談を受け付けています。

 

一方、保証協会は金融機関と保証協会の二重審査があるため、申込から融資実行まで1~2ヶ月程度かかります。

必要書類は公庫と同様ですが、金融機関所定の書類や、保証協会専用の申込書類なども追加で必要です。

また、保証協会では原則として対面での事前相談が必要です。この事前相談で書類の準備状況や事業計画の内容を確認し、スムーズな審査につなげることができます。

特に創業計画書は、市場分析や収支計画、事業の実現可能性を具体的に示すことが重要です。

 

金融機関や保証協会の担当者と綿密なコミュニケーションを取りながら、必要に応じて内容を修正・改善していくことで、審査通過の可能性が高まります。

参考:大阪において信用保証協会融資の取り扱いがある金融機関

 

2. 創業融資を信用保証協会で受けるための必要書類

コツ・ポイント

創業計画書の記入例と信用保証協会が重視するポイント

創業計画書は、信用保証協会の審査で最も重視される書類です。

 

ここでは、創業の動機から具体的な事業内容、市場分析、そして収支計画まで、事業の全体像を示す必要があります。

特に重要なのは「なぜあなたがその事業を始めるのか」という動機の部分です。

 

ただ儲かりそうだからという理由ではなく、市場ニーズと自身の経験や強みがどのように結びつくのかを具体的に説明します。

市場分析では、想定する商圏の人口動態やターゲット層の特徴、競合店の状況などを詳しく記載します。

 

また、差別化ポイントは「価格が安い」「品質が良い」といった抽象的な表現ではなく、具体的な数値や特徴を示すことが重要です。

 

初めてでも書ける資金計画書・収支計画書の作り方

資金計画書では、開業時に必要な資金と、その調達方法を明確に示します

 

必要資金は、店舗の内装工事費や設備購入費、仕入れ資金、広告宣伝費など、できるだけ細かく項目を分けて記載します。

例えば、飲食店の場合、厨房機器一式100万円といった大まかな記載ではなく、オーブン30万円、製氷機15万円というように具体的な内訳を示します。

また見積書がある場合は必ず添付しましょう。

 

収支計画書は、開業後3年間の月次の売上と経費を予測します。

売上予測は「1日の客数×客単価×営業日数」など、計算の根拠を明確にします。

経費についても、人件費、家賃、水道光熱費、仕入れ費用など、漏れがないように記載します。

 

なお、初年度から高い利益を見込むような非現実的な計画は避け、開業後の経費増加や季節変動なども考慮した堅実な計画を立てることが重要です。

 

自己資金の確認方法と必要な証明書類

自己資金は、通常、創業に必要な資金の10分の1以上を準備する必要があります。

例えば、必要資金が1,000万円の場合、最低でも100万円の自己資金が必要です。

自己資金の証明には、普通預金や定期預金の通帳のコピー、残高証明書などが必要です。

これらは申込日前1週間以内に発行されたものを用意します。

また、親族や知人からの借入金を自己資金として計上する場合は、金銭消費貸借契約書の写しと、貸主の預金通帳のコピーも必要です。

 

ただしこの場合は、返済条件を明確にする必要があり、事業収支に影響を与えない範囲での借入であることを示さなければなりません。

なお、クレジットカードのキャッシング枠や、消費者金融からの借入は自己資金として認められないので注意が必要です。

 

さらに、既に設備や内装工事の手付金を支払っている場合は、領収書のコピーも自己資金の証明として使用できます。

重要なのは、自己資金が実際に手元にあることを客観的に証明できる書類を用意することです。

 

金融機関や保証協会の担当者から追加の証明書類を求められた場合は、迅速に対応できるよう準備しておきましょう。

 

3. 信用保証協会の創業融資、申込から融資までの流れ

銀行と保証協会、どちらに先に相談すべきか

一般的には、最初に取引予定の金融機関に相談することをお勧めします。

 

金融機関には創業融資の専門窓口があり、事業計画の立て方から必要書類の準備まで、きめ細かなアドバイスを受けることができます。

また、金融機関によって融資条件や審査の重点項目が異なるため、複数の金融機関に相談することで、より有利な条件を見つけられる可能性があります。
ただし、まったく事業計画が固まっていない段階では、保証協会の創業相談窓口に相談することも一案です。

保証協会では創業支援の専門部署を設けており、業界動向や必要な許認可など、創業に必要な基礎知識から丁寧にアドバイスを受けることができます。

 

その後、ある程度計画が固まった段階で金融機関に相談するという流れも効果的です。

面談で必ず聞かれる3つの質問と答え方

面談では主に、

  • 「なぜその事業を選んだのか」
  • 「どのように売上を確保するのか」
  • 「事業の継続性をどう担保するのか」

という3つの質問が必ず投げかけられます。

1つ目の「事業選択の理由」については、単なる興味や憧れではなく、市場ニーズと自身の経験や強みがどのように結びつくのかを具体的に説明します。

例えば、前職での経験やスキル、人脈がどのように活かせるのかを示すことが重要です。

2つ目の「売上確保の方法」では、具体的な販売戦略とともに、すでに受注や契約の見込みがある場合は、その内容を詳しく説明します。

SNSやWebサイトでの集客方法、営業活動の具体的な計画なども、できるだけ数値を交えて説明することが求められます。

3つ目の「事業継続性」については、リスク要因とその対策、資金繰りの見通しなどを説明します。

特に、最初の3ヶ月間の運転資金をどのように確保するのか、売上が計画を下回った場合の対応策なども準備しておく必要があります。

審査から融資実行まで最短1ヶ月の具体的スケジュール

審査の流れは以下のようになります。

 

まず、金融機関への事前相談から始まり、必要書類の準備と提出を経て、金融機関による一次審査が行われます。

この段階で約2週間かかります。

金融機関の審査を通過すると、保証協会による二次審査に移ります。

ここでさらに1~2週間を要します。

具体的なスケジュール例:

1週目:金融機関への事前相談、必要書類の確認
2週目:事業計画書など必要書類の作成と提出
3週目:金融機関による審査、保証協会への保証依頼
4週目:保証協会による審査、保証承諾
5週目:金融機関との契約締結、融資実行

なお、このスケジュールを実現するためには、事前準備が重要です。

特に、創業計画書や許認可の取得状況、賃貸借契約書などの必要書類は、できるだけ早い段階から準備を進めることをお勧めします。

また、保証協会から追加資料の提出や修正を求められることも多いため、余裕を持ったスケジュール管理が必要です。

 

開業予定日の2~3ヶ月前には、融資の相談を始めることが望ましいです。

 

4. 創業関連保証の3つの制度を完全解説

創業前でも申請できる創業関連保証の具体的な条件

 

創業関連保証は、事業を始める前から利用できる制度です。

個人の場合は事業開始1ヶ月前から、法人の場合は会社設立2ヶ月前から申請が可能です。

ただし、市区町村が実施する特定創業支援等事業による支援を受ける場合は、この期間が6ヶ月前まで延長されます。

 

融資の最高限度額は(制度上)3,500万円で、返済期間は運転資金が7年以内、設備資金が10年以内です。

事業に必要な許認可は、申請時点で取得している必要はありませんが、開業までに取得できる見込みがあることが条件となります。

また、税金の滞納がないことや、暴力団等の反社会的勢力との関係がないことなども要件となります。

初めて事業を始める方の場合、特に重視されるのが自己資金の額と事業計画の実現可能性です。

 

自己資金は創業に必要な資金の10分の1以上を目安に準備するのがおすすめです。

また事業経験がない場合は、関連する研修やセミナーの受講歴なども評価の対象となります。

 

経営者保証不要のスタートアップ創出促進保証

 

スタートアップ創出促進保証は、経営者個人の保証を不要とする画期的な制度です。

 

通常、法人で創業融資を受ける場合、代表者は連帯保証人となることが求められますが、この制度ではその必要がありません。

その代わり、保証料率が通常より0.2%上乗せされます。

この制度を利用できるのは、これから法人を設立する方、または設立後5年未満の会社です。

個人事業主は対象外となります。

また、1期目の税務申告が未了の場合は、自己資金が創業資金総額の10分の1以上あることが要件となります。

 

特に注目すべき点は、経営者の私財と会社の資産を完全に分離できることです。

これにより、万が一事業が行き詰まった場合でも、経営者個人の資産が保全されます。

 

将来的な事業承継や、複数の事業展開を考えている方にとって、大きなメリットとなる制度です。

 

再チャレンジを支援する再挑戦支援保証の要件

再挑戦支援保証は、過去に事業を経営していた方が、再度創業にチャレンジする際に利用できる制度です。

 

経営状況の悪化により事業を廃止した方や、会社を解散した方が対象となります。ただし、廃業や解散から5年以内という期限があります。

融資の最高限度額は創業関連保証と同じく(制度上)3,500万円ですが、この制度の特徴は、過去の事業失敗が審査にマイナスの影響を与えにくい点です。

むしろ、前回の経験から学んだ教訓や、失敗を踏まえた事業計画の改善点を具体的に示すことで、審査での評価につながります。

 

申請に必要な書類は、通常の創業関連保証と同様ですが、追加で過去の事業の廃業届や登記抹消証明書などが必要となります。

税金の滞納がないことの証明も求められます。

 

なお、前回の事業で金融機関に対して債務不履行がある場合は、原則として利用できません。

ただし、債務整理が完了している場合は、状況に応じて検討される可能性があります。

 

5.創業融資を保証協会で受ける際の重要ポイントまとめ

  • 公庫は融資額が大きく審査が厳しい一方、保証協会は地域性を重視した柔軟な審査が特徴
  • 保証料率は0.5%~2.0%の範囲で信用力により変動する
  • 地域の金融機関と連携し、地域特性を活かした事業計画が評価されやすい
  • 売上予測は「1日の客数×客単価×営業日数」など計算根拠を明確にする
  • 自己資金は必要資金の10分の1以上の準備が必要となる
  • 親族からの借入金は金銭消費貸借契約書の提出で自己資金として認められる
  • 申込から融資実行まで1~2ヶ月程度の期間を要する
  • 金融機関と保証協会による二重審査が実施される
  • スタートアップ創出促進保証では経営者個人の保証が不要となる
  • 多くの自治体で保証料の補助制度が設けられている
 
参考:

大山 俊郎

大山俊郎税理士事務所代表税理士

同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社

二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事

特に
・銀行との交渉
・経理の改善
・資金繰り
・事業承継の対策
などに尽力

ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感

日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
を指導

大山俊郎のプロフィール

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