飲食店を開業。個人事業主?それとも法人?メリット・デメリットを解説
「脱サラして飲食店を開業したい」と考える人の中には個人名義で事業を始める、「個人事業主」として開業するのか、法人を設立して会社形態で飲食店を始めるのかの悩みを抱えているという人も多いのではないでしょうか?
飲食店を開業する場合、個人事業主にも法人にもメリットとデメリットがあります。
開業の際には、なんとなくではなく、これらのメリットとデメリットをよく理解して開業することが重要です。
この記事では、飲食店開業の際の事業形態について徹底解説を行っていきます。
【飲食店の開業】法人設立のメリット
事業の売上高などが上がり、事業規模が大きくなると、個人事業主として事業を営んでいる人はほとんどいません。
多くの事業者が法人として事業を営んでいます。それには法人には個人事業主と比較して以下のようなメリットがあるためです。
・社会的信用が高い
個人名義で事業を行うよりも、法人名義としたほうが一般的には社会的な信用が高くなります。
会社の社会的な信用を得るために法人としている会社も少なくありません。
・共同経営などの場合に有利
法人の場合には、役員1人1人の報酬を設定することができます。
個人事業主の場合には、経営者が複数いても、事業主は1人ですので、「共同経営」という形をとることが非常に難しくなります。
最初から共同経営で飲食店を開業する際には、事業の収益と役員の給料を明確に区分することができる法人形態のほうがよいでしょう。
・利益が出ると税金も優遇
法人の税金は一律です。
例えば、開始事業年度が平成30年4月1日以降の中小法人で税引前利益が800万円以下の部分であれば、税率は一律で23.2%となります。
開業間もない場合の多くがこのパターンに当てはまるため、税率は利益額に関係なく23.2%程度に収まると考えてよいでしょう。
・経営者の給料も経費参入できる
法人の場合には、経営者の給料も経費として参入できます。
ここは個人事業主との大きな違いです。
個人事業主の場合には、売上−経費=事業主の給料(所得)となるため、経営者やその親族などの給料は経費参入できませんが、法人の場合には、経営者やその家族の給料も経費参入できるというメリットがあります。
このように、利益が大きく出た場合には、税率も利益に関係なく一律で、経営者の給料も経費に参入できる法人のほうがメリットがあります。
【飲食店の開業】法人設立のデメリット
法人を設立して開業することはメリットばかりではありません。
むしろ、創業間もなくという経営そのものがうまくいくかいかないか分からない状態での法人設立はデメリットのほうが大きいと言えるかもしれません。
・設立手続きが面倒
そもそも法人は、個人事業主と比較して、設立にかかる手続きが非常に面倒で費用もかかります。
法人設立には定款の作成や、登記の手続きが必要になり、この手続きを司法書士などに頼むと、費用が発生します。
また、法人設立には登録免許税という税金も必要になり、この税金が15万円、さらに定款認証手数料、定款印紙代などで9万円程度必要になり、設立にかかる費用だけで30万円〜50万円程度見ておかなければなりません。
個人事業主では、このような費用は一切不要であることを鑑みれば、この点は法人設立の明らかなデメリットであると言えます。
・社会保険に加入する必要あり
また、法人は、自身や従業員を社会保険に加入させなければなりません。
社会保険は会社と従業員の折半で保険料を支払いますので、個人事業主であれば発生しない費用がここでも必要になることになります。
・経理や決算が面倒で厳格
法人の経理のルールは個人事業主と比較して面倒ですし、決算書の作成も個人事業主と比較して面倒です。
個人事業主では会計士を通さずに自身で確定申告を行うことも全く珍しくありませんが、法人の決算処理は複雑であるため、会計士や税理士をつけることが一般的で、ここでも税理士報酬などが発生してしまいます。
【飲食店の開業】個人事業主のメリット
では、個人名義で営業を行う個人事業主には法人と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?
・特に設立手続きは必要ない
個人事業主は法人と異なり、特に設立にかかる手続きは必要ありませんし、業種に制限もないため、どのような商売でも行うことができます。
税務署へ「開業届」という書類を1枚提出するだけで簡単に設立手続きを終えることができます。
この書類に費用は発生しません。
・会計手続きが容易
法人と比較して個人事業主の会計手続きは非常に簡単です。
税理士をつけなくても、自分で簡単に確定申告を行うことができ、税理士報酬などが必ずしも必要ではなくなります。
このように、個人事業主の場合には、法人では必ず必要になる費用がかからないことが多いという点がメリットです。
【飲食店の開業】個人事業主のデメリット
個人事業主は、利益が大きくなってくると以下のようなデメリットが生じます。
・経費として認められる部分が少ない
個人事業主は経営者の給料に代表されるように、経費として認められる部分が少ないというデメリットがあります。
利益が大きくなってくると経費参入できる部分が限られるために、所得が大きくなり、高額の税金を支払わなければならない場合があります。
・所得に応じて税金が上がる
個人の所得税の税率は以下のようになっています。
195万円以下:税率5% 控除額0円
195万円超330万円以下:税率10% 控除額97,500円
330万円超695万円以下:税率20% 控除額427,500円
695万円超900万円以下:税率23% 控除額636,000円
900万円超1,800万円以下:税率33% 控除額1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下:税率40% 控除額2,796,000円
4,000万円超:税率45% 控除額4,796,000円
所得が900万円以下の場合には法人よりも税率は低くなります。
その一方、所得が900万円を超えると税率は33%まで跳ね上がり、法人よりも高額の税金を払わなければならない可能性が高くなります。
このように、個人事業主は、所得に比例して税率が上がる累進課税という方法で税率が設定されるため、所得が多くなった場合には、高額の納税をしなければならないというデメリットがあります。
・個人ローンを借りにくい
個人事業主は上記のように、税率が所得に応じて上がっていくため、なんとか支払う税金を節約しようと、個人の用途で使用した費用までも経費として参入している人がほとんどです。
そもそも事業と生活が一体化している個人事業主は、どこまでが事業の経費でどこまでが生活費なのかの区分は曖昧ですので、それでも税務署から何も突っ込まれないことがほとんどです。
例えば、自家用車を事業の用途にも使用している場合には、どこまでが生活費としてのガソリン代で、どこからが生活費としてのガソリン代なのかの区分を行うことは困難です。
実際に、この方法によって、多くの個人事業主が所得を少なくして、税金を節約していますが、所得が低くなると、個人ローンの審査に通過しにくいというデメリットが生じます。
個人ローンの審査は、経費の中に生活費が混入していようがいまいが、確定申告で申告した所得をもとに審査を行いますので、申告所得が低い個人事業主は住宅ローンなどの審査に通過することは非常に困難になってしまいます。
もちろん、高額納税を覚悟で正直に申告を行えば全く問題はありません。
【飲食店の開業】最初は個人事業主で十分
では、最初に飲食店を開業するときには、個人事業主と法人のどちらにすればよいでしょうか?
結論的に言えば、最初は個人事業主で十分です。
飲食店には、お店の名前である屋号というものがあります。
普段私たちが利用している飲食店の経営が法人なのか、個人事業主なのかなど私たちは知っているでしょうか?
ほとんどの場合は、お店の名前の方が知られているのではないでしょうか?
飲食店に置いては、法人名よりはお店の名前である屋号の方がブランド力が高い業種であるため、わざわざ法人を設立しても必ずしも信用を得るということはできません。
また、飲食店という単価が低い業種で、個人事業主が最初から900万円を超えるような所得を得ることはかなり難しいと言えるため、個人事業主でいたほうが、大抵の場合で、支払うべき税額は法人よりも少なくなると考えてよいでしょう。
つまり、最初から多額の設立費用をかけて法人を設立するメリットはどこにもありません。
利益が出てきたら法人成りを
最初は個人事業主として飲食店を開業し、利益が出てきたら法人成りするという方法がおすすめです。
具体的には、税率が法人税率よりも大きくなる900万円の所得を超えた場合には法人にした方がよいでしょう。
いきなり法人にするのではなく、事業の成長とともに事業形態のあり方も考えるという方が金銭的に見てメリットがあります。
まとめ
飲食店開業の際に、法人として事業をスタートするか、個人事業主としてスタートするかは「かっこいい」とか「見栄えがよい」などという安易な理由だけで決めるべきではありません。
法人も個人もそれぞれにメリットとデメリットがあります。
とくに金銭的な面でみれば、利益が少ないうちは個人事業主の方がメリットがありますし、利益が大きくなってくると法人の方がメリットがあります。このため、どうしても法人がよいというこだわりがない場合には、個人事業主としてサクサクスタートして、事業規模が大きくなってから法人成りした方がよいでしょう。
創業時には法人設立に時間と費用をかけるくらいであれば、売上を拡大するために注力すべきです。
電話でもお申し込みOK
06-6940-0807
【受付時間】10:00〜18:00(土日祝除く)

大山 俊郎
大山俊郎税理士事務所代表税理士
同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社
二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事
特に
・銀行との交渉
・経理の改善
・資金繰り
・事業承継の対策
などに尽力
ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感
日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
を指導