• タックスプランニング(節税)

「まかない」を経費にしていませんか?

大山 俊郎
監修者 大山 俊郎

大山俊郎税理士事務所 代表 大山俊郎(おおやま としろう)
経営者から年間100件以上の相談を受けている税理士。
中小企業を応援することが大好きで「100年続くように会社の経営をサポートすること」を使命としている。夢は日本中の中小企業を「お金が貯まる会社」にすること。
代表的な著書は「SWOT分析を活用した【根拠ある経営計画書】事例集」。

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賄い

飲食店を経営している方へ!

 

求人広告に、

バイト募集 まかない付き!

と書いてしまっていませんか?

 

 

この言葉を、あなたのお店にふらっと立ち寄った税務署の職員さんが見ると…

「このお店は税金の申告で「まかない」の経費処理をきちんとやってるかな?たぶんやってないだろうから、税務調査に入れば…」

と思うかもしれないのです。

 

 

もしあなたがお店を開業したいけどお金が足りない…

ということで悩んでいたら、創業融資サポートサービスで創業診断。

 

 

飲食店のお客様から「まかないは経費になりますか?」というご相談が多いこともあり、今回は「まかないが経費になるのか」についてお話ししたいと思います。

 

実際にどのようなご相談が多いかと言うと、例えば次の通り。

 

「私のお店には4人のアルバイトがいるので、仕事の休憩時間には必ず『まかない』を提供しています。

毎日発生するものなのでぜひこの『まかない』を経費にしたいのですが・・・」

 

飲食業界の採用市場について、市況感を見てみましょう。

結論から申し上げますと、飲食業界では人手不足が問題になっています。

 

コロナ禍になってからも、まだまだ厳しい状況が続いています。

令和4年10月の厚生労働省の情報になりますが、

 

・飲食物調理の職業の有効求人倍率は2.62倍。
・接客・給仕の職業の有効求人倍率は2.29倍。

つまり、従業員1人を飲食店2社以上が取り合っている、というイメージです。
参考:厚生労働省/一般職業紹介状況(令和4年10月分)

飲食業界の採用については、厳しい状況が続いているため募集内容や求人の出し方には工夫が必要なのです。

 

そのような中で人材確保をするための工夫として、「まかない」料理で差別化を図ろう!という飲食店も少なくありません。

ただ、この「まかない」は、現物給与(お給料)として扱われる可能性もあるため、経理上の注意が必要です。

 

そこで今回は、この「まかない」に関する税金、とくに経費にする場合の注意点をご紹介します。

 

「まかない」を経費にしていませんか?

働く人からみれば、「まかない」で1食済ませることができれば、生活が少しでも助かりますよね。

 

無料で食事ができれば食費を浮かすことができますし、そうなれば未経験で安い給料で働いても、生活面で苦労せずに済みます。お店の側からみても、少しでも人手不足を解消するためには、未経験者でもスタッフを確保したいところです。けれども募集時には注意しておかなければなりません。

「まかない」は決して無料で提供できるわけではなく、あくまでも給料の一部として支給するものと定められているからです。そのために、従業員さんに支払うお給料に、「まかない」にかかった経費も合計して所得税の課税所得を計算する必要があります。

ここで注意しておきたいポイントを挙げておきます。

「まかない」はあくまでも、余った材料を使ってスタッフに提供するという性質のものです。極端な話、どうせ破棄する材料で作ったものだから、無料で従業員に提供しても悪くないのではないか、とも考えられます。

 

けれども税務署の考え方は違います。

 

これは見方を変えると、提供する料理に対して多くの材料を仕入れ、その余剰分で従業員に食事を提供するとも解釈できます。少なくとも税務署から見ると、売り上げに対して多くの仕入れを行い、経費を増やして納める税金を減らしていると捉えるわけです。

恒常的に「まかない」が発生しているのであれば、結果的に材料が余ったので従業員に食事として提供しました、という道理は通用しないのです。これは計画性があると判断されます。

そのために、従業員はそれを現物給与として受け取るので課税されるという考え方になります。堅い表現をすれば、租税回避行為とならないように売り上げとして計上する、という意味合いになります。

それを知らずに会計処理をしておかないと、税務調査が入った時に指摘されることになります。例えば一回の「まかない」が400円相当であるとして2人の従業員に月22日、12ヶ月提供していたとします。

すると年間211,200円分の源泉所得が徴収漏れになっていると指摘され、その源泉所得税に加えて不納付加算税の10%を納めることになります。これは飲食店側だけの問題ではありません。

従業員も給与の額が増えることに加えて、住民税や社会保険料も上がるので後から支払わなければなりません。

迷惑をかけないように、しっかりと経費や源泉徴収(天引き)などの処理をしておくことが大切です。

 

「まかない」は経費(福利厚生費)として扱うこともできる

福利厚生

実は「まかない」は、条件によっては給与として課税されない分もあります。平成29年4月1日の国税庁による特殊な給与のNo.2594に次のようにあります。

役員や使用人に支給する食事は次の二つの要件を満たしていれば給与として課税されない

  1. 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担している
  2. 次の金額が1ヶ月当たり3,500円(税抜き)以下であること

(食事の価額)-(役員や使用人が負担する金額)

このふたつの条件を満たしていれば、会社側が負担した価額分は福利厚生費として計上できます。

けれどもこのふたつの条件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人が負担した金額を差し引いた金額(負担していなければ全額)を給与課税することになります。ここで価額とは、食事の材料費や調味料など食事を作るために直接使用した経費の合計金額を示します。

もし計算が難しい場合には、消費税法上では自家消費の場合、売価の70%以上を原価とする、とあります。つまり「まかない」を提供メニューに照らし合わせて売価を決めて、その7掛けで経費の計算すれば良いというわけです。

※仕出し弁当などを購入して「まかない」にした場合には、業者に支払った金額全てが経費となります。

また、ここで注意したいのは3,500円という金額です。

これは会社側が負担する金額ですが、仮に1ヶ月5,000円負担したのであれば3,500円の差額の1,500円を給与として加算すれば良いのかというと、そうではありません。

厳密に言えば、「たとえ1円でも」超えると、その全額が給与扱いになります。

つまりこの例の場合は5,000円が課税給与となるわけです。役員や使用人からみると、すでに負担している金額に加えて、この5,000円分が課税されるというわけです。

例えばアルバイトやパートの場合、月によって勤務日数が変わることがあります。日数が増えたことにより会社が負担する価額が3,500円を超えた場合には、会社負担の金額は給与/雑収入で仕訳して源泉徴収(天引き)することになります。

 

従業員に対しての説明も必要

一方で飲食店で働く従業員の側についても考える必要があります。

求人募集で「まかない有り」となっていれば、一般的にはタダで食事ができると認識します。けれども給料明細を見てみると、例えば食事代6,000円と食事控除6,000円という形で記載されることになります。

結果的にはプラスマイナスで手取りはゼロ円ですが、6,000円分しっかりと課税されていることが分かります。ならば最初から食事代など入れないで欲しいと考えることになるでしょう。

そこで前もってきちんと、その仕組みを説明しておく必要があります。この価額が9,000円であれば、3,000円分が課税されずに済むわけです。

けれども食費をゼロとしてしまうと、9,000円分丸ごと後で課税されることになります。「まかない」の代金を請求するというのは気が引けるかもしれませんが、きちんと説明をしておかなければ後でトラブルになる可能性もあります。

 

残業時間での「まかない」は非課税に?

実は宿日直や残業時間といった、通常の勤務時間外における「まかない」は非課税対象になります。現金で支給した場合には課税対象になりますが、飲食店の「まかない」には関係ない話でしょう。けれども一応、制度上どのような決まりがあるのかを知っておくと役に立ちます。

まず残業時間内での食事、と定義されているので、食事をとった時間が残業時間内であることが条件となります。

勤務時間内に食事をして残業したというようなケースでは課税対象になるので注意しましょう。また、「まかない」が飲食店内での材料を使って作ったものではなくても非課税となります。具体的には、出前をとってもらったというような時、その領収書を提出してもらえば現物支給であることを証明できます。

また深夜勤務での「まかない」として、現金を食事代として渡す場合には1食あたり300円(税抜き)以下であれば課税されません。

 

【「まかない」の経費】まとめ

「まかない」は少なからず従業員の負担になることは間違いありません。その点も踏まえて、求人募集も注意する必要があります。通常は「まかない」の価額はそれほど高額にはなりませんので、会社側は経費(福利厚生費)として仕訳処理をすることができます。

・・・でも3,500円以下で収まらなければ、従業員の給与として計上することになるので注意が必要になります。

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大山 俊郎

大山俊郎税理士事務所代表税理士

同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社

二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事

特に
・銀行との交渉
・経理の改善
・資金繰り
・事業承継の対策
などに尽力

ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感

日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
を指導

大山俊郎のプロフィール

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