起業家への第一歩は開業届から|必要書類の準備、作成、提出まで解説
今は会社員だけの収入源では安心できません。例えば円安やインフレの進行。様々なリスクに備え個人も稼ぐ力をつける必要があるのです。そこで今回は、会社員が起業するために必要な開業届の必要書類の準備、作成、提出までを解説いたします。この記事を読めば忙しい会社員でも開業届の入手から提出までの手順がわかります。
この記事を読むとわかること
・開業届とは・開業届の入手方法 ・開業届の書き方 ・開業届の提出方法 ・開業届を自分で作成する、プロに任せるそれぞれのメリット・デメリット |
第1章 はじめに
結論から申し上げますと会社員でも起業できます。なぜなら、起業は会社員であるかどうかではなく事業を営む準備があるかどうかが重要だからです。自分でもできますが、プロ(税理士)に依頼すれば確実に開業届を完成させることが可能です。
第1章-1 開業届とは
開業届の正式名称は「個人事業の開業届出・廃業届出書」です。個人が事業を開業した時に税務署に提出し、受理されれば個人事業主になれます。
第1章-2 開業届が必要な対象者
開業届を提出する対象者は、フリーランスやその他事業を継続して行う準備をしている人です。会社員でも事業を継続して営むのであれば対象者になります。
第1章-3 開業届に必要な書類
開業届を税務署に必ず提出しなければいけない書類は、下記の3つです。
・個人事業の開業届出・廃業届出書・マイナンバー証明書※1 ・本人確認書類※2 ※1 マイナンバー通知カードのコピーやマイナンバーが記載された住民票など ※2 運転免許証、パスポート、公的医療保険(健康保険)の被保険者証、 身体障害者手帳、在留カードなどのコピーなど |
今回は詳しい説明を省きますが、必要に応じ下記の書類が必要な場合もあります。
・青色申告承認申請書
・青色事業専従者給与に関する届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
第1章-4 開業届を提出するメリット
開業届を提出する2つのメリットについて解説します。
・屋号での預金口座の作成が可能・事業資金の融資を受ける際に提出可能 |
ひとつずつ説明します。
屋号での預金口座の作成が可能
開業届には、屋号を記載する欄があります。必ずしも必要ではありませんが、預金口座を屋号で作成することができます。個人名より信頼が増す、副業の収支を一括で管理できる、というメリットがあります。
事業資金の融資を受ける際に提出可能
個人事業主の方が事業を拡大する際には資金調達が必要になりますが、資金調達手段の1つとして事業資金の融資を受けることが考えられます。事業資金の融資を受ける際には開業届の提出が必要です。
第1章-5 開業届を提出するデメリット
開業届を提出することのデメリットは、下記の2つです。
・雇用保険上の基本手当(失業保険)が失効・扶養の対象外 |
ひとつずつ説明します。
雇用保険上の基本手当(失業保険)が失効
会社員が無職になったら、条件により雇用保険上の基本手当(いわゆる失業保険)が受給できます。しかしながら、個人事業主になるとその権利が失効します。
扶養の対象外
扶養に入っている人が開業届を提出し事業を営むと、収入により扶養からはずれます。なぜなら一定の事業収入を超えてしまうと、扶養から外れなければいけないというルールがあるからです。例えば、夫の扶養に入っている妻が開業し、年間の収入が130万円を超えると扶養から外れ、自ら社会保険料を納める必要が出てきます。
第2章 開業届の必要書類入手方法
開業届の入手方法は3つあります。
・最寄りの税務署・国税庁のウェブサイト・ネット上のクラウド会計サービス |
ひとつずつ説明します。
第2章-1 最寄りの税務署
1つめは、最寄りの税務署の窓口で直接用紙を入手することです。
最寄りの税務署が不明な場合には、下記のサイトで郵便番号を入力すればわかります。
第2章-2 国税庁のウェブサイト
2つめは、国税庁のウェブサイトです。下記のリンクから「個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)」が入手できます。
第2章-3 ネット上のクラウド会計サービス
3つめは、ネット会計サービスを利用することです。いずれも無料、短時間に作成できます。有名な会計サービスを下記に紹介します。
第3章 開業届の必要書類作成方法
この章では、開業届の書き方と注意点を解説します。
第3章-1 開業届の書き方
開業届を入手したら下記の17項目を記入します。
・税務署名(提出先) ・提出日 ・納税地 ・上記以外の住所地・事業所等 ・氏名・生年月日 ・個人番号 ・職業 ・屋号 ・届出の区分 ・所得の種類 ・開業・廃業等日 ・開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 ・事業の概要 ・給与等の支払いの状況 ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無 ・給与支払を開始する年月日 ・関与税理士 |
順に説明します。
①税務署名
第2章-1でお示しした方法で管轄する税務署を調べ、名前を記入します。
②提出日
開業届を提出する日を記入します。事業化の予定が立った日になります。
③納税地
生活の中心になる場所です。住民登録している場所でなくても構いません。
④上記以外の住所地・事業所等
事務所を構える時はそこの住所です。
⑤氏名・生年月日
氏名・生年月日です。
⑥個人番号
マイナンバーです。下記で確認できます。
・通知カード
・マイナンバーカード
・マイナンバー記載ありの住民票
⑦職業
主な収入が得られる職業を記載します。建築関係で起業するなら「建築請負業」などです。
⑧屋号
事業の名称、店舗の名前などです。無くてもかまいませんが、あればメリットもあります。具体的には、第1章-4 開業届を提出するメリットをご参照ください。
⑨届出の区分
届出の区分は「開業」です。
⑩所得の種類
所得の種類は、例えば、建築請負業の場合「事業所得」になります。
⑪開業・廃業等日
基本、開業日は、開業届の提出日から過去1ヶ月以内にする必要があります。
⑫開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
開業届と同時に「青色申告」する場合、ここをチェックします。
⑬事業の概要
想定される収益の柱を記入します。
⑭給与等の支払いの状況
従業員を雇うときに記入が必要です。
⑮源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
従業員を雇い「源泉所得税の納期の特例」を利用する時に「有」にチェックを入れます。
⑯給与支払を開始する年月日
従業員を雇い給料を支払う場合に記載します。
⑰関与税理士
税理士に作成をお願いした場合のみに記入します。
第3章-2 開業届の書き方注意点
開業届の書き方で注意が必要なのは、下記の2つ。
・控えは必ず保管・提出は開業してから1ヶ月以内 |
順に説明します。
控えは必ず保管
控えは銀行口座を作成する時や融資を受ける時に必要です。また、保育園に子供を預ける際、就労証明として求められます。
提出は開業してから1ヶ月以内
開業届は、開業してから1ヶ月以内に提出しなければいけません。罰則はありませんが、義務です(所得税法第229条)。
第4章 開業届の必要書類提出方法
完成した書類は、税務署に提出し、受理されて初めて個人事業主になれます。この章では、開業届の提出方法について解説します。
第4章-1 最寄りの税務署に持ち込み
紙で作成した開業届は、所轄の税務署に持参すれば受け取ってくれます。不明箇所は空欄で持参し、その場で担当者に教えてもらえるメリットがあります。ただ、確定申告と重なる2月下旬から3月中旬はとても混雑します。
第4章-2 国税庁のウェブサイトからアップロード
国税庁のウェブサイトのサービス「e-Tax」を使うと自宅からも提出できます。e-Taxでプリントアウトすれば控えも同時に得られます。ただ、パソコンの知識が必要なこと、間違いがあれば後で税務署から再提出が求められます。
第4章-3 郵送
税務署で直接入手したり、ネット上の会計サービスを使って印刷したりした書類は管轄の税務署に郵送することで提出できます。その際、開業届の控えをもらうため、自分の住所を書いた切手を貼った返信用封筒を同封しておく必要があります。
第5章 開業届を自分で入手、作成、提出するときのメリット、デメリット
この章では、開業届を自分で作成から提出する場合のメリット・デメリットを解説します。
第5章-1 開業届を自分で準備するときのメリット・デメリット
開業届を自分で入手、作成、提出すれば金銭的コストはほどんどかかりません。さらに開業届の作成を行った経験は知識習得にもなりますし、起業家としての自信につながります。
他方、自分で対応するデメリットは、開業届の入手から提出に手間や調査時間がそれなりかかることです。「とにかく早く起業家になりたい」、「失敗して時間をロスしたくない」と言う方は迷わずプロ(税理士)に任せる方が効率的です。
第5章-2 開業届を税理士に依頼するときのメリット・デメリット
開業届を税理士に依頼するときのメリットは、安心と確実性です。開業と同時に青色申告の相談にのってくれたり、頻繁にある法改正にも対応してくれたりするので、とても頼りになります。
他方、税理士に依頼するデメリットはコストです。顧問契約すれば開業届から毎年の確定申告まで面倒を見てくれますが、年商500万円以内の場合、費用は数万円から20万円程度(業種や相談頻度により異なります)です。決して安い費用ではないですが、貴重な時間を節約できるメリットをどう考えるかです。
第6章 まとめ
開業届の入手、書き方、提出方法、自身で作成するか、さらにはプロ(税理士)にお願いする時のメリット・デメリットについてよく理解できたかと思います。最後にこの記事の内容をまとめてみました。
・開業届とは、個人が起業する時に税務署に提出する書類 ・事業を継続して行う準備をしている人が開業届の提出が必要な対象者 ・会社員でも開業届を提出すれば起業家 ・開業届の提出には書類は3つの書類が必要 ・開業届は税務署や国税庁のウェブサイトから入手可能 ・開業届の入手は、最寄りの税務署、国税庁のウェブサイト、クラウド会計サービス ・開業届を入手したら17項目を記入すれば完成 ・税務署に持ち込む、郵送、国税庁のウェブサイトからアップロードして提出 ・開業届を自分で入手、作成、提出すればコツとは不要 ・開業届をプロ(税理士)に依頼すれば、安心、確実に提出可能 |
開業届が税務署に受理されればあなたも立派な一人の起業家。この記事を参考に確実に起業家としての道を歩まれることを願って止みません。

大山 俊郎
大山俊郎税理士事務所代表税理士
同志社大学商学部卒業後
父が経営する年商50億の会社へ入社
二代目経営者として
現場での下積みから
会社のヒト、モノ、カネ管理まで従事
特に
・銀行との交渉
・経理の改善
・資金繰り
・事業承継の対策
などに尽力
ある親族との同族問題で自社の株式
を売却をした経験から
「会社のヒト・モノ・カネの管理は
会社と経営者一族の運命を左右する」
ことを痛感
日本随一の
「同族会社経営を経験した税理士」
として事務所を開設し
「会社にお金を残す節税マニュアル」
を開発
全国の同族会社の経営者・法人経営者
向けに「会社を強くする仕組み作り」
を指導